日本製鉄、USスチールの完全買収に依然意欲 国家安全保障審査の再評価待つ

Nippon Steel

トランプ政権下での承認に期待、最大140億ドルの投資計画も

日本製鉄(5401)は、米USスチール(NYSE: X)の完全買収を断固として継続する方針を示した。同社副社長で交渉責任者の森高広氏は、買収により米国製鉄業を強化し、「無償ではない日本の中核技術」の共有が可能になると語った。

買収案は、2024年にバイデン前大統領の下で国家安全保障を理由に一度は却下されたが、トランプ前大統領が2025年4月に審査の再開を指示したことで、事態は再び動き出している。現在、対米外国投資委員会(CFIUS)が再審査を行っており、期限は5月21日。トランプ氏は6月5日までに最終判断を下す見通しだ。

「完全買収こそが米国を強くする」——日本製鉄の戦略とは

森氏は、完全買収でなければ、日本製鉄の持つ製鋼技術を米国側と共有できず、USスチールの競争力を抜本的に強化できないと指摘。共同出資ではなく、100%買収を前提とするのが日本製鉄の立場だ。

同社はまた、CFIUSの議長を務めるスコット・ベセント米財務長官との会談を要請しており、トランプ氏の政策意向を正確に把握した上で最終局面に臨む構えだ。

最大140億ドルの投資計画、米国重視姿勢を強調

ロイター報道によれば、日本製鉄は買収後にUSスチールへ最大140億ドルを投資する計画を策定中で、そのうち最大40億ドルは新たな製鉄所の建設に充てる見通しだ。森氏は詳細には触れなかったが、投資額の増額は収益性と連動しており、同社の財務を圧迫しないと説明した。

さらに、USスチールの社名や本社機能、統合生産体制を維持し、米国人中心の新役員構成とし、うち3名はCFIUSが指名する独立取締役が担う方針。これにより、国家安全保障上の懸念にも応える形となる。

森氏は、「この買収は米国製造業を強化し、トランプ氏の政策と100%一致している」と述べ、米国側の最終的な理解と承認に期待を示した。

一方で、日本製鉄は2026年3月期の純利益が前年比43%減と予測しており、中国の過剰生産と輸出、米国の関税措置が収益圧迫要因となっている。米国市場への本格展開が、同社の新たな収益基盤となるか注目される。

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