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Gold Prices |
金市場の動向:米国の強力な雇用データが価格に与える影響
米国の堅調な雇用統計を受け、金価格が下落しました。このデータにより、連邦準備制度理事会(FRB)が今月末に利下げするとの圧力は後退し、金への魅力が薄れた形です。木曜日午前10時45分(米国東部時間)までに、現物金は0.9%下落し1オンスあたり3,326.35ドルとなりました。過去2営業日の上昇分のほとんどを帳消しにする動きです。米国金先物もニューヨーク市場で0.7%下落し、1オンスあたり3,336.90ドルで推移しました。
予想を上回る雇用統計と利下げ観測の後退
最新の米国の非農業部門雇用者数がアナリスト予想を上回り、失業率も予想を下回ったため、金の売り圧力が強まりました。これを受けてドル、米国債利回り、米国株指数先物が一斉に上昇し、金には下押し圧力がかかりました。High Ridge Futuresの金属取引ディレクター、デビッド・メガー氏は、「予想を上回る雇用者数は、FRBが早期に利下げする可能性が低いことを意味する」と述べました。「7月の利下げの可能性がなくなったことが重要だ」と強調しています。金利のつかない金は、低金利環境下で魅力が増す資産であり、利下げは金にとって好材料となります。
短期的な調整と長期的な強気見通し
AmeriVet Securitiesの米国債取引戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は、「大きな問題は失業率だった」とブルームバーグに語りました。「7月の利下げの扉は閉ざされ、FRBは夏の間様子見をするだろう。FRBが動くための針は雇用であり、それがパウエル議長に『様子見』の余地を与えている」と指摘しました。ロイター通信によると、市場は現在、年内にFRBが約53ベーシスポイントの利下げを織り込んでおり、これは雇用統計発表前の約66ベーシスポイントから下方修正されました。利下げ開始時期も10月と予想されています。しかし、この短期的な調整にもかかわらず、金は今年最も好調な資産の一つであり、4月に記録した最高値から約170ドル安で取引されています。地政学的・貿易摩擦の高まりの中で、投資家が安全資産を求める需要に支えられてきました。ユリウス・ベアのアナリスト、カーステン・メンケ氏は、「米国の債務が増加し続けるにつれて、投資家は米ドルに対する懸念を強める可能性があり、これは長期的に金に恩恵をもたらすはずだ」と述べています。
金属フォーカス 編集部コメント
今回の金価格の下落は、米国の経済指標がもたらす短期的な市場の反応を明確に示しています。しかし、地政学的緊張や主要国の財政状況といった構造的な要因は、依然として金の長期的な魅力を支えるでしょう。投資家や政策担当者は、短期的な変動に惑わされず、金が持つヘッジ機能と資産保全の役割を再認識することが重要です。