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Global Steel Products Anti-Dumping |
世界各国は、不当に廉売された(ダンピング)鉄鋼製品の輸入から国内産業を保護するため、対策を強化しています。この動きは、グローバルな鉄鋼市場における通商摩擦の激化を明確に示しています。本記事では、米国、ブラジル、中国が最近発表した調査開始や関税延長の動きを分析し、世界の鉄鋼製品におけるダンピング対策の現状と、その背景にある各国の思惑を探ります。
米国とブラジル:国内産業保護のための新規調査
米国商務省は、アルジェリア、ブルガリア、エジプト、ベトナムからの鉄筋輸入に対するダンピング調査を開始しました。米国の鉄筋貿易行動連合は、これらの輸入が市場価格を下回る水準で供給され、国内生産者に損害を与えたと主張しています。予備的なダンピングマージンは、アルジェリアで127%、エジプトで128%超、ベトナムで117%と高い数値を示しています。加えて、これら3カ国からの補助金付き供給に関する申し立ても提出され、世界の鉄鋼製品におけるダンピング対策の動きが加速しています。
同様に、ブラジルも中国、インド、インドネシアからの熱延鋼板輸入に対する調査を開始しました。ブラジル国内の鉄鋼生産者は、中国による攻撃的な価格設定に長年苦言を呈しており、今回の調査は市場の歪みを是正する狙いがあります。これらの動きは、国内産業の保護が喫緊の課題であることを強く示唆しています。
中国:ステンレス鋼に対するアンチダンピング措置の延長
一方で、中国は欧州連合(EU)、英国、韓国、インドネシアからのステンレス鋼輸入に対するアンチダンピング関税をさらに5年間延長することを決定しました。関税率は国や製品によって20.2%から103.1%と幅広く設定されています。中国商務省は、これらの措置を撤廃した場合、国内生産者が再び損害を被る可能性があると説明しています。これは、中国が自国の巨大な鉄鋼産業を守るために、断固とした通商政策を継続する姿勢を示していると言えるでしょう。
高まる保護主義とウクライナへの示唆
世界的に保護主義の傾向が強まる中、各国は自国の生産者を守るための措置を講じています。ウクライナも例外ではありません。大規模戦争開始以降、ウクライナへの鉄鋼輸入は急増しており、特にトルコからの輸入が顕著です。2024年にはトルコ製圧延鋼材の輸入シェアが51%を超え、一部の品目では市場の80~90%に達しています。これは、劣悪な条件下で操業する国内生産者にとって深刻な脅威です。トルコで安価なロシア産原材料が広く使用されている点を踏まえると、ウクライナは製品の原産地管理メカニズムを導入し、EUが実践するようなアンチダンピング措置を検討すべきです。これらの動きは、世界の鉄鋼製品におけるダンピング対策が国境を越えた喫緊の課題であることを改めて浮き彫りにしています。
金属フォーカス 編集部コメント
世界の鉄鋼製品におけるダンピング対策の強化は、単なる貿易摩擦ではなく、各国の産業基盤と雇用を守るための重要な戦略です。特に、過剰生産能力を抱える一部の国からの安価な製品流入は、市場の公正な競争を阻害し、グローバルサプライチェーンに混乱をもたらします。今後、通商保護措置はさらに多様化・複雑化する可能性があり、企業はこれら国際的な貿易ルールの動向を注視し、サプライチェーンの多角化や高付加価値製品への転換を加速させる必要があります。