欧州グリーンスチール市況に停滞感、規制後押しで長期需要増に期待

グリーンスチール

平鋼のプレミアムは最大300ユーロも買い手慎重、2026年以降の供給逼迫を懸念

【ロンドン】欧州市場でのグリーンスチール(低炭素鋼)取引は、依然として限定的な動きにとどまっている。経済環境の不透明感により、流通段階での需要が伸び悩んでおり、価格面でも買い手と製鉄所の間にギャップが生じている。

Fastmarketsによると、グリーンスチール(スコープ1・2・3排出量が最大0.8tCO₂/t)に対する平鋼プレミアムは、主力メーカーによって1t当たり200~300ユーロに維持されているが、実際の取引では120~180ユーロが妥当とされ、まとまった数量ではディスカウント提示もある。

5月8日時点の「北欧域内HRC指数に対する平鋼グリーンスチール差額」は、1tあたり150~200ユーロで据え置かれた。長期的にはカーボン・ボーダー調整措置(CBAM)など規制による需要増を見込む声が多く、製品の先取り確保を進める動きも散見される。

「現在、排出量1t以下のグリーンスチールを量産できる欧州の平鋼メーカーは4社のみ。2026~28年にかけて新規供給が始まる見込みだが、それまでに需給逼迫が起きる可能性がある」と製鉄所関係者は指摘する。

棒鋼市場では「1ユーロも上乗せできない」現実

一方、棒鋼市場におけるグリーンスチールの需要はさらに弱く、買い手はプレミアムの支払いを拒む傾向が強い。5月7日時点での北欧向けグリーン棒鋼プレミアムは1tあたり20~40ユーロで、前週(20~30ユーロ)から上限が拡大したが、実際の取引は小ロットかつ低価格帯に集中している。

現在の欧州市場では、グリーンスチールに対する「環境価値」は理解されつつも、経済的対価としては反映されにくい状況にある。今後は規制強化と供給制約が市場の地合いを転換させる可能性が高く、長期契約での価格形成が主流になると予想される。

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