![]() |
copper cathode |
世界最大の銅生産国であるチリのガブリエル・ボリッチ大統領は、米国が検討する銅に対する関税案について、ワシントンからの正式な通達を待っていると述べました。ドナルド・トランプ前大統領が銅輸入に50%の関税を課す意向を示したことが、世界の銅市場に大きな不確実性をもたらしています。チリ政府は、この政策の詳細を早急に求めています。
チリの懸念とコデルコの待機姿勢
ボリッチ大統領は、現地メディアEmolに対し、「米国政府からの公式な通達を待っている。政策がどうなるのか、銅カソードが含まれるのか、制限は何か、そして実際に実施されるのかどうか」と語りました。この発言は、世界最大の銅鉱山会社であるチリ国営コデルコ(Codelco)が「様子見」の姿勢を示した後に出されました。コデルコのパチェコ会長は、関税がどの銅製品に適用されるのか、またすべての国に適用されるのかを知りたいと述べています。
パチェコ会長はロイターに対し、「何に関するものなのかを理解する必要がある。どの製品が影響を受けるのか。なぜなら(トランプ氏は)銅について一般的な言葉で言及したが、銅には様々な製品が含まれる」と語りました。さらに、「そして、これがすべての国に適用されるのか、それとも一部の国にのみ適用されるのかを確認する必要がある。例外が設けられることは常に知っているので、コメントするのは時期尚早だと考える」と付け加えました。チリは米国の銅最大の供給国ですが、米国市場はチリの精製銅輸出の7%未満を占めるに過ぎません。
グローバルな銅サプライチェーンへの影響と今後の動向
メキシコは米国の精製銅供給国として5番目に大きく、トランプ政権による関税を避けるため、出荷先を変更する可能性を示唆しています。メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、メキシコシティでの記者会見で、「銅は世界中の多くの場所で必要とされており、いくつかの選択肢がある」と述べました。
このような不確実性にもかかわらず、銅業界は迅速な対応を試みています。ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスは、チリからの輸送には通常20日以上かかるため、生産者が関税を回避するのに十分な速さで銅を米国に出荷することは難しいと警告しました。欧州の鉱山会社も同様の物流上の課題に直面しています。これを見越して、米国の輸入業者はここ数カ月で銅の出荷を前倒ししました。2025年1月から4月までの間に、米国は46万1,000トンの銅を輸入し、これは2024年と2023年の同時期と比べてそれぞれ23万2,000トンと14万8,000トン多い数値です。
金属フォーカス 編集部コメント
米国の銅関税に関する不確実性は、世界の銅市場に短期的な混乱をもたらす可能性があります。しかし、チリやメキシコといった主要生産国の対応は、市場が代替供給経路を模索し、柔軟に対応する能力を示しています。この動きは、今後の重要鉱物のサプライチェーンにおける政治的リスクと多様化の重要性を浮き彫りにするでしょう。