ニッケル価格の下落がステンレス価格を直撃

ステンレス

アジアからの輸入圧力と割引維持で米国ミルの値上げは困難に

2024年5月以降続くニッケル価格の下落が、ステンレス鋼市場に影響を与え、価格は軟化傾向を強めている。これにより、「Stainless Monthly Metals Index(MMI)」は4月から5月にかけて3.34%低下した。

ニッケル価格の低迷に対し、北米最大手のNorth American Stainless(NAS)は2025年5月に新たな関税上乗せ料金を導入し、サーチャージの下支えを図った。しかし、その効果も限定的で、304ステンレスのサーチャージは2021年1月以来の低水準となった。

米国ミル・サービスセンター、需要回復も価格押し上げは困難

第一四半期には、米国のステンレス供給業者が市場改善を報告した。フィンランドの大手Outokumpuは、世界全体での出荷量が前四半期比11%増、米州では13%増と大幅な伸びを見せた。Acerinox傘下のNASも、米国における堅調な受注を背景に、製鋼量が前四半期比29%増(前年比11%増)となった。

RyersonとReliance Steel & Aluminumといったサービスセンターでも出荷量は増加。Ryersonは前四半期比17%増、Relianceは12%増と堅調だった。

しかしながら、価格面では苦戦が続く。Ryersonの販売価格は前四半期比2.7%減、Relianceでは5.3%減となった。アジアからの輸入圧力が強く、3月に発効した新たな鉄鋼関税も限定的な影響にとどまっている。

米国と他国の通商交渉、関税環境に変化の兆し

NASが追加した関税サーチャージは、今後月ごとの変動が見込まれる。英国はすでに米国と新たな貿易協定を締結しており、今後の他国との交渉に影響を与える可能性がある。米中間でも一時的な合意により、少なくとも90日間は関税が引き下げられている。

こうした通商動向とニッケル価格の変動が、今後のステンレス価格に大きな影響を与えるだろう。


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