鉄鉱石パラドックス:投資停滞とグリーンスチールへの課題

Iron Ore Market


鉄鉱石市場は高いボラティリティが続き、長期投資を阻む「鉄鉱石パラドックス」が顕在化しています。資本は脱炭素化プロジェクトに向けられるものの、短期的な収益確保が優先され、最終投資判断(FID)が停滞しています。特にDR(Direct Reduced Iron)グレードの供給不足が、グリーンスチール移行の障害となっています。


DRグレード鉄鉱石の重要性と供給不足

低炭素製鋼には、鉄分67%以上の高品位ペレットが不可欠です。水素還元鉄(H-DRI)やガス還元鉄(G-DRI)ルートでは、低不純物で高鉄分の原料が求められます。しかし、現状の海上供給量の5%未満しか存在せず、2050年までに需要は5~10倍に増加する可能性があります。DRグレード鉄鉱石の安定供給がなければ、グリーンスチールの普及は遅延するリスクがあります。


価格変動が投資を阻む要因

鉄鉱石は歴史的に最も変動の激しいコモディティであり、DRグレードペレットのプレミアム価格も不安定です。過去3年でプレミアムは1トンあたり95ドルから38ドルに低下しました。価格変動により、製鋼所は高品位ペレットへの支出を抑制し、鉱山企業の新規投資意欲が減退します。この構造が「鉄鉱石パラドックス」を生み出しています。


投資を促進するための条件

市場が安定性と透明性を取り戻すことが不可欠です。具体策として、地域別DRグレードペレット指数の設定、グリーンプレミアム契約、CBAMなどの政策支援、鉱山と製鋼所のオフテイク契約によるリスク共有が挙げられます。これらが整えば、長期的に安定した供給と投資回収が可能となり、グリーンスチールの拡大が加速します。


金属フォーカス 編集部コメント

鉄鉱石パラドックスは短期的市場変動と長期脱炭素需要のギャップを示しています。高品位ペレットの供給不足はグリーンスチールの進展を遅らせる可能性が高く、透明な価格指標と政策支援が投資加速の鍵となります。製鉄企業と鉱山企業は戦略的パートナーシップで安定供給を確保する必要があります。

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