![]() |
| Tungsten |
タングステン価格は過去1年間で5倍に急騰しています。中国からの供給制約と長期的な投資不足が、世界的な供給不足を加速させています。BMOグローバル・コモディティーズ・リサーチは、この市場の逼迫がさらに深刻化する前に対策可能であると指摘します。
タングステンの供給逼迫の背景
BMOのGeorge Heppel氏とHelen Amos氏は、世界が「タングステン危機」に無自覚に突入していると分析しています。原因は鉱石品位の低下、環境規制の強化、新規採掘投資の不足です。2026年も供給不足が続くと予測され、在庫水準は依然として危機的に低い状況です。
タングステンは重工業の基盤を支える金属で、特にタングステンカーバイドは極めて硬く高密度で、機械部品やドリルビット、耐摩耗材に不可欠です。代替が難しく、製造・採掘・防衛産業において重要な役割を果たしています。
中国は世界供給の約75%を占める主要生産国です。しかし、鉱石品位低下や環境規制の強化、輸出規制により生産は停滞しています。特にアンモニウム・パラタングステン酸(APT)は2025年末に一部輸出がゼロとなり、価格は従来の約300ドル/トンから2026年初頭には1,775ドル/トンへ急騰しました。
市場再均衡のための五つの戦略
BMOは供給逼迫を緩和するための5つの可能性を提示しています。
1. 中国国内の鉱山供給拡大:鉱石品位や環境制約により短期的拡大は困難ですが、Dahutangプロジェクトなどは長期的に供給を増やす可能性があります。
2. 中国以外の新規鉱山開発:複数プロジェクトが進行中ですが、許認可取得や建設には数年を要します。
3. 手工業的採掘:世界供給の約6%を占める小規模採掘は価格上昇で一部増加が見込まれますが、在庫補充には不十分です。
4. リサイクル:西側市場で大幅なリサイクル拡大は難しいものの、中国は収集・加工インフラ構築で二次供給拡大が可能です。
5. 需要削減・代替材活用:タングステンの特性上代替は限定的で、広範な置換は期待できません。
短期的には手工業的供給増と限定的需要削減により市場は均衡に向かうものの、在庫を十分に回復させるには至りません。BMOは長期的には高価格が新規鉱山開発を誘発するとしています。「高価格の解決策は高価格である」と結論づけています。
米国をはじめとした再工業化と防衛関連支出の加速により、タングステン需要は今後も増加が見込まれます。供給課題は重要鉱物戦略において引き続き注目されるでしょう。
金属フォーカス 編集部コメント
タングステンの供給不足は世界の製造業と防衛産業に直接影響します。短期的な価格上昇が供給拡大を促す一方で、長期的には新規鉱山開発やリサイクル強化が不可欠です。中国依存からの脱却と在庫戦略の最適化が、グローバル産業競争力の鍵となります。


