アルセロールミッタル、鉄系合金サーチャージ引き上げで鋼材コスト調整

ArcelorMittal Flat Carbon Steel


欧州の大手鉄鋼メーカーであるアルセロールミッタルは、鉄系合金サーチャージを引き上げ、フラットカーボン鋼のコスト上昇に対応します。今回の調整は、欧州委員会による新しい保護措置の施行後の材料費高騰に基づくものです。


サーチャージ引き上げの詳細と影響

サーチャージの増額は製品ごとに異なり、一般的なコモディティ向けの鋼材では数ユーロの増加に留まります。しかし、アルセロールミッタルの受注量の10~15%に該当する製品は、約€10/トンの追加サーチャージが見込まれます。さらに特殊鋼種では€20~50/トンまで引き上げられる場合があります。

鉄系合金価格は全般的に上昇しており、シリコマンガン(マンガン65%)は11月20日から12月9日の間に€175/トン上昇し、€1,140/トンとなりました。フェロシリコン(シリコン75%)は€317.50/トン上昇の€1,525/トン、フェロマンガンは€167.50/トン上昇の€1,140/トンです。加えて、フェロマンガンなど一部合金はCBAM(炭素国境調整措置)の対象となり、輸入コストのさらなる増加が見込まれます。


EU保護措置と市場への波及

特に高ゲージコイルや電気鋼向けシリコン鋼では、CBAMのデフォルト値が他の汎用鋼材に比べ極めて高く設定されています。日本はHS722511やHS22611の電気鋼で5トン超、中国は9トン近くに設定され、EUは低コスト・高炭素海外競合から自国のフェロシリコン産業を保護しています。先月導入された保護措置により、フェロシリコンはクォータ外最低価格が€2,408/トンcif Europeに設定され、施行前のスポット価格の2倍以上となりました。

これにより、欧州域内の鉄鋼メーカーは鉄系合金サーチャージを活用し、コスト転嫁と国内生産保護の両立を図る構えです。


金属フォーカス 編集部コメント

EUの保護措置は、鉄系合金市場の価格安定化と域内産業保護を狙った戦略的施策です。特殊鋼種やシリコン鋼の高コスト化は、グローバル鋼材サプライチェーンや輸入動向にも影響を及ぼす可能性があります。今後の欧州鉄鋼市場の価格動向は、投資家とメーカー双方に重要な指標となるでしょう。

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