北米最大級銅プロジェクト、「Pebble鉱山」の運命は?EPAとの和解協議が市場を揺らす

Pebble Mine


Northern Dynasty Minerals(ノーザン・ダイナスティ・ミネラルズ)社は、アラスカ州の主力プロジェクトであるPebble鉱山に関する米国環境保護庁(EPA)との係争について、和解協議を進めていると発表しました。この進展を受けて同社株価は5年ぶりの高値を記録し、市場の大きな注目を集めています。Pebble鉱山は、稼働すれば北米最大のモリブデン抽出サイトとなる見込みです。

2023年1月、EPAはPebble鉱山プロジェクトに対し、ブリストル湾流域への鉱山廃棄物貯蔵を禁止し、事実上の「拒否権」を行使しました。この流域は世界最大規模のベニザケ漁業地域であり、EPAは鉱山廃棄物が清浄水法によって保護された2,000エーカー以上の湿地を恒久的に破壊する可能性があると主張しました。これに対し、Northern Dynasty社は、EPAの拒否権が2020年7月に米国陸軍工兵隊(USACE)が発表した環境影響評価書と矛盾すると主張し、連邦裁判所に提訴していました。

Northern Dynasty社のロン・ティーセンCEOは、今回のEPAとの協議がPebble鉱山への拒否権撤回に向けた「最速の道筋」であると述べました。EPAも7月3日付の提出書類で「再検討に前向き」であり、Northern Dynasty社からの追加情報提出を歓迎すると確認しています。これにより、世界的に需要が高まる電化に必要な銅、そして軍事用途に不可欠なレニウムなどの金属の国内供給を米国が確保する道が開かれる可能性が出てきました。

2023年の経済調査によると、Pebble鉱山は20年間で約290万トン(64億ポンド)の銅、740万オンスの金、約13.6万トン(3億ポンド)のモリブデン、3,700万オンスの銀、20万キログラムのレニウムを生産する見込みです。EPAが拒否権を撤回すれば、USACEによる承認プロセスも再開される見込みです。


金属フォーカス 編集部コメント

Pebble鉱山を巡るEPAとの和解協議の進展は、米国における重要鉱物確保戦略の転換点となる可能性があります。この大規模プロジェクトが実現すれば、グローバルな銅供給に大きな影響を与え、地政学的リスクを抱えるサプライチェーンの多角化に貢献するでしょう。環境保護と経済的利益のバランスをいかに取るか、今後の動向が注目されます。


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