東南アジアの非鉄スクラップハブ機能に試練:輸入障壁と貿易摩擦の拡大

Southeast Asia Nonferrous Scrap Trade

東南アジアは長らく、世界の非鉄スクラップ貿易における重要な中継拠点でした。ここでは低品位のスクラップが精錬され、中国の厳格な輸入基準を満たす高品位の原料として再輸出されてきました。しかし現在、増加する不確実性の中で、多くのサプライヤーは最善を願いつつも最悪の事態に備え、代替の供給先を模索しています。

タイでは、環境規制の強化と輸入基準の厳格化がスクラップ貿易の流れを混乱させています。タイ港湾当局は、シュレッダー処理された自動車部品から出るアルミニウムを多く含む混合金属スクラップ**「zorba」**や、絶縁銅線、モーターなどを「電子廃棄物」と分類し、押収するケースが相次いでいます。これは「バーゼル条約」の解釈を巡る混乱であり、米国の一部のサプライヤーは、この押収は条約の誤解釈だと主張しています。

また、タイの製錬所は現在、ニュージーランドやUAEなど、米国以外の地域から使用済み飲料缶(UBC)を調達しています。これは、Maersk社が米国発のリサイクル材料のタイ向け出荷を一時停止したことも影響しています。この措置は、17億ドル相当の高品質な原材料の流れに影響を及ぼす可能性があります。サプライヤーは積荷を近隣の港に転送したり、インド市場への出荷を検討したりしています。

一方で、銅スクラップの分野では異なる動きが見られます。中国の最新の税関データによると、タイは5月に中国への銅スクラップ供給で米国を抜き、最大の供給国となりました。歴史的に米国が最大の供給国でしたが、米中間の関税や潜在的な輸出規制への懸念が、米国からの材料に対する需要を冷え込ませています。国際リサイクル事務局(BIR)のアルノー・ブリュネ事務局長は、こうした貿易障壁が「裏口的な保護主義」であり、グローバルで自由な取引を阻害すると強く懸念を表明しました。

このような混乱の中、中国企業は東南アジアを含む海外でのスクラップ処理能力を強化しています。中国の企業が現地プレイヤーを圧倒しているという懸念がある一方で、タイの企業は技術共有や雇用創出といったメリットを享受し、中国からの投資を歓迎する姿勢も見せています。今後の非鉄スクラップ市場では、ますます多くのプレーヤーが原料確保のために競争を激化させるでしょう。


金属フォーカス 編集部コメント

今回の事態は、非鉄スクラップ市場における地政学的リスクと規制の不確実性が、サプライチェーンの脆弱性を露呈させた典型的な事例です。特に東南アジアが持つ中間拠点としての機能が試練に立たされており、各国はサプライチェーンの多角化と、国際的なルール設定の明確化を急ぐ必要があります。この混乱は、市場のプレイヤーにイノベーションと効率化を強く促すでしょう。


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