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豪州鉄鉱石輸出、減収予測の背景にあるグローバル市場の変革
オーストラリア政府の最新報告によると、鉄鉱石輸出収益は2024-2025会計年度の1,160億ドルから、2026-2027会計年度には970億ドルへと、約190億ドル減少する見通しです。この予測は、世界的な鉄鋼需要の低迷、中国の生産減退、そしてブラジルやアフリカからの供給増加が複合的に作用しています。FOBベースの鉄鉱石価格(Fe含有率62%)は、2024年の平均93ドル/トンから、2027年には74ドル/トンまで下落するとの分析が出ています。
中国の鉄鋼生産と不動産市場の減速が需要に影を落とす
世界最大の鉄鉱石輸入国である中国は、製鉄所の収益性悪化と不動産市場の低迷により、鉄鋼生産を抑制しています。2025年1月から5月までの中国の鉄鋼生産は、前年同期比で1%減少しました。この中国からの需要減退は、2025年第1四半期におけるオーストラリアの鉄鉱石輸出量にも影響を与え、前年同期比で1.5%減少しました。政府は2026-2027会計年度には供給量が9億2,700万トンまで回復すると見込んでいますが、世界的な価格下落と豪ドルの上昇が輸出業者の利益を圧迫します。
グローバル供給競争の激化と豪州の市場リーダーシップ
収益の減少にもかかわらず、オーストラリアは依然として世界の鉄鉱石輸出量の50%以上を占める、安定した市場リーダーとしての地位を維持しています。しかし、今後はアフリカ(特にギニアのシマンドゥー・プロジェクト)やブラジルにおける生産能力の拡大が、後半にかけて市場競争を激化させる見込みです。例えば、2025年6月27日時点では、大連商品取引所の9月限鉄鉱石先物は99.95ドル/トンまで上昇し、シンガポール取引所の7月限契約も94.4ドル/トンで推移するなど、短期的には価格変動が見られますが、長期的な下落トレンドは避けられないでしょう。
金属フォーカス 編集部コメント
鉄鉱石市場は、中国経済の構造転換と新興供給国の台頭により、変革期を迎えています。今回の豪州の減収予測は、単なる価格変動ではなく、グローバルサプライチェーンの再編を示唆しています。企業は、需要地の多角化やコスト競争力の強化を通じて、この新たな市場環境に適応する必要があります。