米国鉄鋼メーカーを圧迫する輸入関税:2025年5月に3,900万ドルの追加コスト

U.S. steel industry


米国政府が課した広範な輸入関税が、米国の鉄鋼メーカーに大きな経済的負担をもたらしています。Argusの分析によると、2025年5月には、海上輸送される鉄鋼原料および鉄スクラップの輸入に対して、米国の鉄鋼メーカーが約3,900万ドルの追加コストを支払いました。この関税は、電気炉(EAF)で扁平圧延鋼材を生産する米国の鉄鋼メーカーにとって不可欠な、輸入鉄スクラップピッグアイアン、および直接還元鉄(DRI)のコストを直接的に押し上げています。

2025年5月、米国の鉄鋼メーカーは合計107万トンの鉄鋼原料と鉄スクラップを輸入しました。その申告価格は3億8,600万ドルに達し、10%の関税が3,860万ドルの追加費用となりました。この追加コストは、主にピッグアイアン、Nucorのトリニダード工場で生産されたDRI、NucorのルイジアナDRI工場で使用される鉄ペレット原料、およびヨーロッパからのバルク鉄スクラップに課されました。カナダとメキシコからの輸入は、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)により関税が免除されています。Nucorは、多様な原料調達戦略により、これらの輸入関税による収益への影響を大きく受けないとしていますが、Steel Dynamicsは国内のスクラップ利用を強化する動きを見せています。

今後の展望として、トランプ米大統領はブラジル産ピッグアイアンおよび鉄鉱石製品に50%の関税を、欧州産鉄スクラップに30%の関税を2025年8月1日に課す意向を示しました。これらの新たな輸入関税が導入されれば、米国の鉄鋼メーカーのコストはさらに増大し、国際および国内のサプライチェーンの再編を余儀なくされるでしょう。この政策は、国内の鉄スクラップ市場に大きな影響を与え、世界の貿易フローに劇的な変化をもたらす可能性があります。


金属フォーカス 編集部コメント

米国による輸入関税の強化は、グローバルな金属・マテリアル産業のサプライチェーンに深刻な影響を与えています。特に、米国以外の地域の鉄鋼メーカーや供給業者にとっては、新たな市場戦略の構築が急務となるでしょう。この動きは、世界的な鉄鋼市場の再編を促し、新たな資源調達ルートや技術革新への投資を加速させる可能性を秘めています。


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