アルセロールミッタル、貿易混乱が鉄鋼需要回復の足かせに

アルセロールミッタル

欧州では政策支援が下支えも、米中の下振れリスクが顕在化

世界最大級の鉄鋼メーカー、アルセロールミッタルは2025年の鉄鋼見掛け需要の成長予測に対し、「貿易の混乱が下振れリスクとなり得る」と警鐘を鳴らした。同社は、欧州では政府の政策支援でスプレッドが回復傾向にある一方、中国では過剰生産能力が価格を圧迫し、回復が遅れていると指摘している。

インドでは実需の堅調な拡大に加え、新たに承認されたセーフガード措置が価格の下支え要因となっている。米国でも関税が鉄鋼価格の維持に貢献しているが、米中市場では見通しの不透明感が高まっている。

欧州の鉄鋼投資判断は政策実行に依存

アルセロールミッタルは「欧州では『鉄鋼・金属行動計画』や輸入対策、ドイツのインフラ基金などが今後の見通しを支えているが、実際の効果は迅速な政策実行にかかっている」と強調した。とりわけ、産業界への競争力あるエネルギー供給、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の有効運用、貿易防衛措置の実行が鍵になるとしている。

同社は現時点で欧州部門の投資優先順位を再評価する考えは示していないが、これらの政策が整備されれば投資方針を見直す可能性を示唆している。

2025年の設備投資額は45億〜50億ドルを見込み、そのうち14億〜15億ドルを成長戦略プロジェクト、3億〜4億ドルを脱炭素関連プロジェクトに充てる予定だ。

第1四半期業績は減収減益も欧州で回復兆し

2025年第1四半期の粗鋼生産量は前年比3%増の1,480万トン、鉄鋼出荷量は1%増の1,360万トンだった。売上高は148億ドルで前年比9%減、純利益は14%減の8億500万ドル。EBITDAは19%減の15.8億ドルで、EBITDAマージンは10.7%(前年比−1.32ポイント)に縮小した。

地域別では欧州の鉄鋼出荷量が4%増の750万トン、EBITDAマージンは5.1%と前年の4.4%から上昇した。一方、北米ではマージンが21%から16.5%へと低下した。

CEOのアディティア・ミッタル氏は「貿易条件を巡る不透明感がビジネスの信頼を損ね、さらなる経済的混乱を招くリスクがある」と述べた上で、「各国政府が国内製造業支援に積極姿勢を示している点は好材料だ」としている。

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