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Codelco |
チリでは11月に大統領選挙が実施されます。この選挙は、同国の最も重要な経済エンジンである鉱業セクターの未来を左右します。特に、国営銅最大手であるコデルコの命運が問われています。かつては国の誇りであった同社は、現在200億ドル以上の債務を抱え、老朽化したインフラと長年の生産減少に苦しんでいます。この選挙の結果は、世界の銅およびリチウム供給に直接的な影響を与えるでしょう。
コデルコの再建をめぐる対立候補の公約
右派候補のエヴリン・マッテイ氏やホセ・アントニオ・カスト氏は、コデルコの部分民営化を主張します。彼らは、民間資本の導入と国家管理の緩和が、会社の効率を改善し財政健全性を回復させると論じています。一方、与党連合を代表する共産党のジャネット・ハラ氏は、完全な公的管理を支持しています。彼女は、コデルコと既存のリチウム採掘企業であるSQMの共同事業案に反対し、新たな国営企業によるリチウム資源開発を提案しています。
この選挙は、チリの鉱業部門が直面する課題に対する根本的な解決策を提示します。しかし、どちらの道を選んでも、政治的・社会的なリスクが伴います。
グローバルサプライチェーンへの波及効果
チリは世界最大の銅生産国であり、リチウムの主要供給国でもあります。同国の鉱業セクターの安定性は、世界の電動化推進にとって不可欠です。現行の「現状維持」はコデルコの衰退を招くという見解が多くの投資家の間で共有されています。また、BNPパリバによると、2025年第1四半期のチリGDPは前年比2.3%成長し、経済は堅調に推移しています。しかし、長期的な安定にはコデルコの問題解決が不可欠です。同社がどのような道を歩むかによって、チリのグローバルな資源マップにおける役割が再定義されることになります。
金属フォーカス 編集部コメント
チリ大統領選挙は、資源ナショナリズムと経済的実用主義のバランスを問う重要な試金石です。結果次第では、コデルコの再編が加速し、生産性向上につながるかもしれません。しかし、政治的な混乱が続けば、世界の銅・リチウム供給網に不確実性をもたらすリスクもあります。投資家やメーカーは、選挙動向を注視し、サプライチェーンの多様化を含めたリスクヘッジ戦略を検討すべきです。