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KGHM |
銀価格上昇の中で注目集まる主要鉱山
世界の銀需要と価格がともに上昇する中、主要鉱山の生産実績に業界が熱視線
2024年、銀価格は1オンスあたり34ドルに達し、年初から19%の上昇を記録しました。これは金の上昇率29%に迫る勢いで、投資家や産業界からの関心が再燃しています。銀は貴金属でありながら、太陽光発電や電子機器、電気自動車などの工業用途でも不可欠な存在です。
シルバー・インスティテュートは、2025年の世界銀需要が120億オンスに達すると予測しており、そのうちの約7割(70億オンス)が工業用途によるものと見られています。この旺盛な需要を背景に、2025年には鉱山生産量も前年比2%増の8億4,400万オンスと、7年ぶりの高水準が見込まれています。
2024年 銀生産量トップ20鉱山ランキング
KGHM(ポーランド)とNewmont(メキシコ)が上位を独占、ロシアやカザフスタン勢も健在
「金属フォーカス」がまとめた2024年の世界銀鉱山生産ランキングによると、首位はポーランドのKGHMグループで、カルロタ、ルビン、ポルコビツェ=シェロショヴィツェ、ルドナなどを含む複数鉱山で合計4,330万オンスを生産しました。KGHMの銀は主に銅の副産物として得られています。
第2位はNewmontのペニャスキート鉱山(メキシコ)で3,300万オンスを生産。2023年の労使対立による長期ストライキを乗り越え、安定操業に回帰しました。3位はFresnilloとカナダのMag Silverが共同運営するフアニシピオ鉱山(メキシコ)で1,857万オンスでした。
その他、ボリビアのサン・クリストバル鉱山(1,536万オンス)、メキシコのサウシト(1,447万オンス)やサン・フリアン(1,183万オンス)も上位に入りました。さらに、カザフスタンのゼスカズガン複合鉱山(1,405万オンス)やロシアのルブツォフスコエ(1,278万オンス)など、旧ソ連圏の鉱山も依然として存在感を示しています。
銀価格と供給構造の変化が今後の焦点
鉱山再編・副産物比率の増加・環境技術導入が競争力の鍵に
近年の銀鉱山の動向を見ると、主力鉱山の多くが銅、鉛、亜鉛などの副産物として銀を回収しており、価格変動への対応力が高いことが特徴です。また、米国アラスカのGreens Creek鉱山(848万オンス)は自動化技術を導入し、労働コストの低減と安全性向上を両立させています。
一方、ロシアやトルコの鉱山は地政学的リスクや制裁の影響を受けつつも、高水準の生産を維持しており、供給の多極化が進んでいます。さらに、Codelco(チリ)が運営するチュキカマタやミニストロ・ヘールスなどの大規模銅鉱山も銀の重要供給源として機能しています。
金属フォーカス編集部コメント:
銀は金と同様に安全資産としての魅力を持ちながら、工業金属としての性格も強く、価格変動要因が複雑化しています。再エネ投資やEV需要の拡大に伴い、工業需要は今後も堅調に推移すると見られますが、一方で主産鉱山の減少、副産物依存の高まり、地政学的リスクの影響をどう乗り越えるかが中長期的な課題です。鉱山投資家にとっては、生産効率とESG対応の両立が今後の収益確保の鍵となるでしょう。
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