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Lifezone Metals |
段階開発からフルスケール建設へ転換
タンザニアのカバンガ鉱山は、世界的なニッケル価格低迷とインドネシアの供給増により戦略を変更
Lifezone Metalsは、タンザニアのカバンガ・ニッケル鉱山開発計画を全面的に見直しました。段階的な開発方針を撤回し、年産340万トン規模の地下鉱山と選鉱施設の一括建設を目指します。これは、低迷するニッケル価格と競争激化を背景に、採算性と効率性を最大化するための判断です。
一方、カハマ(鉱山から約350km離れた地点)では、同社が独自開発したハイドロメット(湿式製錬)技術を活用する実証プラントが建設されます。この技術は、従来の高温製錬に比べて環境負荷を大幅に低減できる点で注目されています。将来的には、フルスケールのエコロジカル製錬所の建設につなげる方針です。
市況悪化と供給競争が方向転換を後押し
インドネシアの台頭でニッケル供給過剰に、Lifezoneは2025年半ばに最終FS完了を目指す
今回の戦略転換は、2024年に50,000トンの世界的なニッケル生産減少が見られる一方で、インドネシアが前年比17万トン増の220万トンへと急増した事実に起因します。市場の供給過剰感が価格を圧迫し、段階開発では収益確保が困難と判断されました。
これを受け、Lifezoneは2025年半ばまでに新計画に基づいた精密最終経済性評価(DFS)を完了する予定です。短期的な価格変動ではなく、長期的な資源価値と持続可能性を重視した姿勢が見て取れます。
資源量は増加、PGMリサイクル事業にも注力
高品位ニッケル埋蔵を強みに、グレンコアとの米国触媒リサイクルJVも推進中
最新の資源評価によれば、カバンガ鉱山の計測済みおよび予測鉱量は7.3%増の4,680万トンに拡大しました。品位も依然として高く、ニッケル2.09%、銅0.29%、コバルト0.16%を維持しています。一方で、推定資源量は35.4%減少し、探鉱対象の明確化が進んでいます。
さらに同社は、グレンコアと共同で米国における白金族金属(PGM)リサイクル事業を展開中です。使用済み自動車触媒からのPGM回収により、都市鉱山の活用とサプライチェーンの多様化を目指しています。
金属フォーカス編集部コメント:
Lifezoneの戦略転換は、世界的なニッケル市場の構造的変化を象徴しています。特にインドネシアの供給主導型成長により、従来の段階的開発モデルは競争力を失いつつあります。一方で、湿式製錬やPGMリサイクルといった低炭素・分散型技術への移行は、将来の資源ビジネスの方向性を示すものです。今後は、埋蔵資源の品位と技術優位性がより重要になるでしょう。
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MINING