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MTM Critical Metals |
Flash Joule Heating技術で都市鉱山に商業展開の道筋、米国の重要金属サプライチェーン再構築を後押し
オーストラリアのMTM Critical Metals(ASX: MTM, OTCQB: MTMCF)は6月4日、米国産電子廃棄物から98%という高い回収率でアンチモン(Sb)を抽出したと発表しました。使用したフィードストック(原料)は、米国製プリント基板(PCB)から得られたもので、金属濃度は3.13%と極めて高い含有率を示しました。
MTMは、米国テキサス州ヒューストンに拠点を置く子会社Flash Metals USAを通じて、独自のFlash Joule Heating(FJH)技術を用いた電子廃棄物(E-waste)からの重要金属や金の回収を商業化しています。
中国最大鉱床の3倍以上の品位
今回のフィードストックは、プラスチックや揮発成分を除去する上流熱処理を経た金属濃縮残渣で、同社が以前に金・銀・銅の超高品位回収を報告したのと同様の都市鉱山原料です。この「アーバン・オア(都市鉱石)」には3.13%のアンチモンが含まれており、中国・湖南省の世界最大級の一次鉱床「西礦山(Xikuangshan)」の平均品位(約1%)の3倍超、世界的な鉱石の一般的範囲(0.1~1.0%)を大きく上回ります。
初の商業施設を米湾岸に確保
MTMは先月、テキサス州チェンバース郡の石油化学回廊内で許認可済みの用地を確保し、同社初の米国商業施設として開発を進めています。すでに年間1,100トン超のEスクラップ供給契約を米国内で締結済みで、安定的な原料供給体制を構築しています。
米国の重要鉱物戦略と連動
米国では現在、アンチモンの国内生産は事実上ゼロの状況にあり、国防総省(DoD)とエネルギー省(DoE)の両方がアンチモンを「重要鉱物」に指定しています。MTMのマイケル・ウォルシュCEOは次のように述べています。
「我々のFJHプロセスが、電子廃棄物から戦略的金属を高効率で回収できる技術的・商業的ポテンシャルを示す成果です。米国内の都市鉱山由来で3%以上の品位かつ98%の回収率は特に重要です。」
MTMはすでに米政府機関(DoDおよびDoE)と、今後の資金支援を含む協議を開始しており、米国のオンショア金属供給網の一翼を担う企業としての存在感を高めています。
《金属フォーカス編集部コメント》
アンチモンは軍需・半導体・蓄電池に不可欠な戦略物資であり、中国依存が長年のリスクとされてきました。今回のMTMの成果は、都市鉱山を活用した「資源の内製化」モデルの現実性を示す好例であり、資源ナショナリズムが高まる中、各国で類似プロジェクトが加速する可能性もあります。ただし、FJH技術の大規模スケールアップや回収コストの最適化が依然として課題であり、経済性と政策支援の両輪が今後のカギとなるでしょう。
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