Thyssenkrupp 電気鋼、欧州生産を一部停止–輸入増と市場圧力に対応

Thyssenkrupp Steel Europe


ドイツの鉄鋼大手、Thyssenkrupp Steel Europeは、同社の電気鋼(Grain-Oriented Electrical Steel)事業部で生産削減と一部停止を発表しました。欧州のGelsenkirchen工場とフランスIsbergues工場は年末まで全面停止し、Isbergues工場は翌年1月から4か月間、50%の稼働にとどまります。

この決定は、特にアジアからの低価格輸入の急増に対応するためです。2022年以降、欧州への電気鋼輸入量は3倍に増加し、今年さらに50%上昇しました。その結果、顧客からの注文が大きく変化し、欧州の生産設備は深刻な稼働率低下に直面しています。


欧州電気鋼市場の構造的課題と今後の展望

欧州の電気鋼メーカーは、ロシアのウクライナ侵攻以降のエネルギー価格の高騰や制裁の影響、さらに中国の過剰生産による競争激化に直面しています。一方で、Thyssenkruppは長期的には市場成長に期待しています。市場調査によると、世界的な電気鋼需要は2050年までに3倍になる可能性があります。

ThyssenkruppのMarie Jaroni CEOは、「電気鋼は欧州のエネルギーインフラと脱炭素化に不可欠な素材であり、我々は欧州生産を維持するため、効果的な市場保護策を強く推進している」と述べています。約1,200人の高品質な雇用を守るため、欧州レベルでの貿易保護措置の迅速な導入が鍵となります。

今回の生産調整は、欧州における電気鋼の戦略的価値を浮き彫りにしています。風力発電や変電所など、エネルギー関連設備で不可欠な素材であるため、適正な競争条件の確保と安定供給が引き続き重要です。


金属フォーカス 編集部コメント

欧州の電気鋼市場は輸入圧力とエネルギーコスト上昇に直面していますが、長期的には再生可能エネルギー拡大による需要増が見込まれます。短期的な生産削減は避けられませんが、戦略的素材としての地位は揺るぎません。

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