コデルコのエル・テニエンテ鉱山損失拡大と銅市場への影響:LME Week 2025速報

El Teniente Mine


チリの国営銅鉱山大手コデルコは、エル・テニエンテ鉱山の生産損失が拡大し、2025年の生産減少が従来の33,000トンから48,000トンに上ると発表しました。さらに、2026年の生産にも約25,000トンの影響が及ぶ見込みです。今回の事故は、7月に発生した岩盤崩落によるもので、同鉱山で35年ぶりに6名の作業員が亡くなる痛ましい事態を招きました。

この生産減少は、インドネシアやパナマ、コンゴ民主共和国の鉱山での供給障害や、チリ内の他の鉱山での減産と相まって、世界の銅市場に大きな供給不足を引き起こしています。国際銅研究グループ(ICSG)は2026年の精銅市場について、従来の余剰209,000トンから赤字150,000トンへと大幅に見直しました。エル・テニエンテ鉱山の損失拡大は、市場の構造的な需給ひっ迫をさらに強める要因となっています。

コデルコは、地質力学や地球物理学の専門家とともに事故原因の調査を進めています。事故の原因は鉱床内部の構造変化による「岩盤破裂(ロックバースト)」と判明し、これは鉱床の形状変化と空洞の相互作用に起因するものです。マキシモ・パチェコ氏は、安全最優先のもとで事業再開を慎重に進めていると強調し、今後2〜3か月の調査期間を設けて長期的な対策を検討すると述べています。

エル・テニエンテはサンティアゴ南方約80kmに位置し、4,500kmを超える坑道網を持つ世界最大級の地下銅鉱山です。コデルコは同鉱山の近代化・拡張に継続投資していますが、深部の鉱山開発に伴う地質的リスクと鉱山運営の難しさを改めて認識しています。特にロックバーストは深掘りに伴う最大のリスクであり、技術と運営の向上による管理が不可欠です。


金属フォーカス 編集部コメント

エル・テニエンテ鉱山事故は、深層地下鉱山の地質リスクの現実を浮き彫りにしました。銅市場の供給逼迫は、投資判断や政策設計に大きな影響を与えます。今後、地質リスク管理の高度化と供給多様化が銅市場安定の鍵となるでしょう。

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