グローバル銅供給見通し下方修正:Grasberg鉱山事故がもたらす2025年の供給赤字

Grasberg mine


インドネシアのGrasberg鉱山で発生した大規模な土砂崩れにより、Goldman Sachsは2025年および2026年の世界銅供給見通しを大幅に下方修正しました。本事故は世界第2位の銅鉱山の生産に深刻な影響を与え、2025年には供給が赤字に転じる可能性を示しています。


Grasberg鉱山事故の影響と供給減少

2023年9月8日、Grasberg鉱山のBlock Caveエリアで土砂崩れが発生し、約80万トンの泥が流入しました。米国の鉱山運営会社Freeport McMoRan(NYSE: FCX)は直ちに操業を停止し、労働者の救助活動に専念しています。現在までに2名の遺体が発見され、7名の労働者が行方不明となっています。Freeportはこの事故を受けて不可抗力を宣言し、原因調査を進めています。

Goldman Sachsの分析によると、今回の事故は最大52万5,000トンの銅供給減少をもたらす見込みです。これを受け、2025年後半の供給予測は16万トン、2026年は20万トン下方修正されました。Grasberg鉱山はBlock Caveだけでなく、Big Gossan、Deep MLZ鉱山も含み、2025年の生産は25万~26万トン減少、2026年は27万トン減少が予想されます。S&P Globalのデータによれば、2025年前半に同鉱山は16万トン以上を生産しています。

Freeportは第4四半期の生産量が極めて低くなると予想し、未被害区域の操業再開は四半期中盤となる見込みです。また、全面的な操業再開は2027年にずれ込み、2026年の生産は従来予測比で最大35%減少する可能性を示しています。


世界銅市場への影響と価格見通し

Grasberg鉱山はFreeportの確定及び推定埋蔵量の50%、2029年までの銅・金生産量の70%を占めており、今回の事故は同社にとって大打撃です。株価は事故発表以降21%以上下落し、今年4月の市場混乱時点の水準まで戻りました。

Goldman Sachsは今回の影響により、2025年の世界銅需給バランスを10万5,000トンの供給余剰から5万5,500トンの供給赤字に修正しました。2026年はわずかな供給余剰を維持するとしています。供給リスクの増大は銅価格の上昇要因となり、同社は2027年に銅価格1トン当たり10,750ドルを目標価格として再確認しました。

短期的には2025年12月のロンドン金属取引所(LME)銅価格予測9,700ドルを上回るリスクが存在し、10,200~10,500ドルのレンジで推移する可能性があります。現時点でのLME銅価格は1トン当たり10,336ドルで、前日比3%上昇しています。


金属フォーカス 編集部コメント

Grasberg鉱山事故は銅供給に大きな不確実性をもたらし、世界的な供給不足リスクを顕在化させました。これにより、銅価格は長期的に強気の展開が予想され、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー関連産業への影響が懸念されます。政策担当者や投資家は今後の供給動向を注視し、代替供給源の確保や需給調整に取り組む必要があります。


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