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Copper concentrate |
ロンドン金属取引所(LME)のLME Week 2025に向けて、銅精鉱の年間ベンチマーク制度が大きな転換点を迎えています。業界関係者は、2026年の処理手数料(TC/RC)が史上初のマイナスになる可能性を懸念しつつ、地域ごとに異なる契約体系が出現する兆しを見せています。この記事では、銅精鉱のベンチマークシステムの現状と課題、そして製錬所の経営リスクについて詳細に解説します。
銅精鉱ベンチマークの現状と市場の分断
銅精鉱の年間ベンチマークは、長年にわたり取引の基準として機能してきました。しかしながら、近年のスポット市場でのTC/RCが大幅に低下したことで、その有効性が疑問視されています。市場関係者は、伝統的なベンチマーク価格が現実の取引価格と乖離し、特に鉱山業者と製錬所間の価格差が広がっている点を指摘しています。インドネシアのGrasberg鉱山やチリのEl Teniente鉱山での生産障害が供給の逼迫を加速し、2026年のベンチマーク価格は過去最低となる可能性が高まっています。
また、中国、韓国、日本、ヨーロッパの各地域でベンチマークの合意が分裂しつつあることも注目すべきです。中国と韓国では2025年中間契約がゼロドルで成立した一方、日本やヨーロッパの製錬所は異なる条件を求めており、地域別の価格設定が進む兆候を見せています。この地域分断は、今後の銅精鉱価格形成に大きな影響を及ぼすでしょう。
製錬所の存続と市場競争の激化
2025年のベンチマークは製錬所に一定の支えを提供しましたが、2026年のゼロまたはマイナスのベンチマークでは経営圧迫が避けられません。日本の三菱マテリアルやJX金属は銅精鉱の処理量を削減し、リサイクル材の活用を強化して収益確保を図っています。一方、オーストラリアのグレンコアが運営するマウントアイザ製錬所は政府から数億ドルの支援を受け、操業継続を図っています。
さらに、市場には石油や穀物取引企業の参入も増加し、銅精鉱取引の競争は激化しています。これにより、中小のトレーダーは高コストの調達競争に耐えられず、市場から撤退する可能性も示唆されています。
ベンチマークの未来と価格決定の進化
市場参加者は従来の年間ベンチマークに代わり、スポット価格連動型のインデックス価格や短期契約の採用を模索しています。銅精鉱市場は「成長痛」を迎えており、価格形成の方法も大きく変わろうとしています。鉱山各社は2026年の長期契約とスポット販売のバランスを慎重に検討し、地域間の物流コストや支払い条件も考慮しながら取引先の多様化を試みています。
一方で、中国製錬所が物流面で有利な立場にあるため、多くの銅精鉱が中国向けに集中するリスクもあります。これは市場の一極集中と地域間の価格乖離をさらに拡大させる要因となっています。
金属フォーカス 編集部コメント
2025年のLME Weekは、銅精鉱ベンチマークの機能不全と市場分断の深刻化を浮き彫りにしました。特に製錬所の収益圧迫は、産業全体のサプライチェーンに長期的な影響を与える可能性があります。今後はスポット価格連動型の契約拡大や地域別価格の定着が進むと予想され、投資家・政策担当者は市場の構造変化を注視する必要があります。