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LME Non Ferrous |
2025年のロンドン金属取引所(LME)ウィークが2025年10月13日(月)に開幕し、世界的に断片化された金属市場の現状が浮き彫りになっています。銅供給の圧迫、アルミニウム市場におけるEUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応、そしてトランプ前大統領の関税政策が残した影響が、供給チェーンに引き続き影響を与えています。
炭素国境調整メカニズム(CBAM)とアルミニウム市場
EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)が2026年1月1日から本格的に実施されるまで3ヶ月を切り、アルミニウム市場はその影響に備えています。CBAMは、EU外から輸入される金属に炭素排出量に応じた追加コストを課すものです。しかし、現在のところ、CBAMの基準や関連する価格情報に関する不透明性が市場に不安をもたらしています。欧州委員会は2026年初頭にCBAM基準を発表する予定ですが、それによりアルミニウムP1020プレミアム価格が上昇しています。
特に、2026年の報告期間に課せられるCBAMのコストは2027年後半まで明確にはなりません。これにより、アルミニウムの輸入業者は先行き不安を抱え、ロッテルダム市場でのプレミアム価格が急上昇しています。例えば、2023年10月7日の時点で、ロッテルダムのアルミニウムP1020Aのプレミアム価格はトンあたり250~280ドルに達しました。
アルミニウムのカナダとの取引摩擦
アルミニウム市場では、アメリカとカナダ間の貿易交渉も注目されています。2025年の時点で、アメリカはカナダからのアルミニウム輸入に対して50%の関税を課しており、これがヨーロッパ市場への供給に影響を与えています。カナダからのアルミニウムの輸入量は急増しており、EU諸国への輸入量は2023年6月から7月にかけて大幅に増加しました。この関税が撤廃されれば、欧州のプレミアム価格が上昇する可能性があります。
銅市場の不確実性と供給制約
2025年のLMEウィークでは、銅の供給不安が中心的な話題となるでしょう。銅の精錬料(TC/RC)交渉が圧力を受けており、2026年の基準値がマイナス数十ドルから正の数値に至るまでの幅を持つ可能性があります。銅の供給は、インドネシアのグラスバーグ鉱山、チリのケブラダ・ブランカ鉱山、コンゴ民主共和国(DRC)のカモア・カクラ鉱山といった主要鉱山の供給問題に大きく影響されています。2023年10月には、LME銅価格が1トンあたり10,800ドルを超える水準まで急騰しました。
亜鉛市場の在庫不足
LMEの亜鉛在庫は2023年10月8日に38,250トンに減少しており、これは7月から続く傾向です。亜鉛の需要は、中国の不動産市場やヨーロッパの自動車業界の低迷により低下していますが、供給が不足する中で価格は安定しています。2026年にはDRCやペルー、中国などの主要鉱山が生産を増加させる予想ですが、関税や貿易摩擦が亜鉛市場に影響を与え続けるでしょう。
LMEウィークの議論
LMEウィークでは、供給制約や炭素コスト、関税の影響を受けた金属市場の動向についての議論が続く見込みです。これらの市場動向は、今後の金属市場にとって重要な指標となるでしょう。企業や投資家は、特に銅やアルミニウムなどの主要金属の供給状況と価格動向に注目し、戦略を立てる必要があります。
金属フォーカス 編集部コメント
LMEウィーク2025で議論されるべき重要なトピックは、炭素排出量の規制強化や関税政策が市場に与える影響です。特に、デジタルプラットフォームを活用した取引の効率化と、持続可能性基準に基づく価格設定が今後の金属市場に与える影響が注目されます。投資家や業界関係者はこれらの変化に柔軟に対応し、戦略的に投資判断を下す必要があります。