中国、希土類の輸出規制を拡大:防衛・半導体分野への影響とグローバル供給網への波及

China Rare Earth


中国の新たな希土類輸出制限が世界の戦略産業を揺るがす

中国政府は2025年11月8日より、希土類(レアアース)に対する輸出規制を大幅に強化します。対象となる元素は、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユウロピウム、イッテルビウムの5種が新たに加わり、合計12種の希土類が輸出制限対象となりました。特に、防衛関連用途と先端半導体産業に関する輸出は、個別審査およびライセンス発給不可とするなど、国家安全保障を意識した措置が強調されています。

また、中国製の希土類や精製設備を使用して製造された製品については、中国国外の企業であっても中国政府の輸出ライセンスが必要となり、サプライチェーンへの影響は国境を超えて広がります。


米中対立の中で進む技術供給網の分断

この新たな規制は、米中間のテクノロジー覇権争いが激化する中で発表されました。バイデン政権下での米国の半導体対中規制強化を受け、中国は戦略資源である希土類を交渉カードとして活用しようとしています。

今回の規制は、10月末に予定されているトランプ元大統領と習近平国家主席の韓国での会談を前に、交渉力を強める狙いもあると分析されています。

中国は現在、世界の精製済み希土類および磁石の90%以上を供給しており、今回の制限は、EV、航空機エンジン、軍用レーダー、半導体といったグローバルな戦略産業に直結するリスクを顕在化させました。


各国・企業の対応と市場の反応

この発表を受け、中国国内の希土類関連企業株は急騰しました。北方希土(China Northern Rare Earth)は10%、盛和資源(Shenghe Resources)は9.4%上昇し、米国のクリティカルメタルズ(Critical Metals Corp)も17%上昇しました。

一方で、台湾TSMCや韓国SKハイニックスといった先端半導体メーカーは慎重な姿勢を見せており、韓国産業通商資源部は「影響を最小限に抑えるため中国と協議を継続する」とコメントしています。

新規制は14ナノメートル以下の先端ロジックチップや256層以上のメモリチップ、それらの製造装置や関連R&Dにも適用され、AIや軍事応用を視野に入れた研究開発も対象となります。


金属フォーカス 編集部コメント

中国の希土類輸出規制強化は、テクノロジーと安全保障が交差する時代において、資源ナショナリズムとグローバル化のせめぎ合いを象徴しています。日本を含む先進国は、代替供給網の構築と素材戦略の見直しを急ぐ必要があります。希土類は単なる原材料ではなく、国家戦略の基軸となる時代が本格化しています。


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