インドのマンガン鉱石価格とマンガン合金価格の乖離が鮮明に

India manganese ore


インドマンガン鉱石価格は供給不足により2024年8月から10月にかけて上昇を続けています。一方で、同時期のマンガン合金価格は鋼材需要の低迷を背景に下落傾向にあります。この価格の乖離は、インドおよびグローバルな金属市場に大きな影響を与えており、投資家やメーカー、政策担当者にとって注目すべき動向です。


インドのマンガン鉱石価格上昇の背景

まず、インドの国営企業であるManganese Ore India (Moil)は、2024年10月の鉱石価格を9月比6.4%引き上げました。これは3か月連続の値上げです。供給面では、南アフリカの労働者ストライキやオーストラリアのSouth32社が運営するGemco鉱山の一時停止が影響し、インドが依存する輸入鉱石の供給が逼迫しました。Gemcoは5~6月に輸出を再開し、9月に全面操業を再開しましたが、輸出量が停止前の水準に戻る時期は不透明です。

さらに、中国でのシリコマンガン価格の上昇や世界的な鋼材市場の強気見通しも、海上輸送される鉱石価格を支えています。加えて、インド国内では6月から9月のモンスーン期間に多雨が続き、採掘や輸送の遅延を招きました。これらの要因が重なり、マンガン鉱石価格の継続的な上昇を促しています。


マンガン合金価格の低迷とその要因

一方、インド国内および海外市場でのマンガン合金価格は逆に下落しています。インドの60%シリコマンガン価格は7月の73,000~74,000ルピー/トンから10月には69,500~70,500ルピー/トンへと下落しました。輸出価格も同様に減少し、70%フェロマンガンも同様の傾向を示しています。

この背景には、鋼材価格の低迷と需要不振があります。鋼材生産者が慎重姿勢を取り、マンガン合金の購入を抑制したため、合金メーカーは鉱石価格の高騰分を価格に転嫁できませんでした。加えて、UAE、日本、イタリアなど主要輸出先での需要も弱含みで、特に欧州と東南アジアの鋼材生産の鈍化が影響しています。


輸出の難航と市場への影響

インドのマンガン合金輸出量は月間3万~4万トンですが、需要減退により輸出が滞ると、国内市場に供給過剰が生じ、価格のさらなる下落リスクがあります。EUはフェロアロイ輸入に対するセーフガード措置を検討中で、決定が11月18日まで延期されたことも輸出不透明感を増大させています。これにより、多くのインドの製錬所は生産を40~50%削減し損失を回避しています。

さらに、高品質なプレミアム合金の価格も下落しており、品質の低い材料だけの問題ではありません。加えて、在庫が積み上がり、買い手は必要最低限の購入に留め、長期契約も避ける傾向が強まっています。大型鋼材メーカーの積極的な購買控えも市場心理を悪化させています。


金属フォーカス 編集部コメント

インドのマンガン鉱石価格上昇は供給網の脆弱性を浮き彫りにしましたが、一方で合金需要の弱さが価格の足かせとなっています。今後、EUの輸入規制動向や中国・インド国内の鋼材需要の回復が価格動向を左右するでしょう。業界は需給バランスの変化に注意を払い、長期的な供給安定化策の検討が求められます。

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