ハフニウム価格が2年ぶり高値圏に接近、電子・航空・ガスタービン業界の需要急増で

Hafnium


欧州市場でハフニウム価格が過去2週間で急騰し、2023年12月以来の高値水準に達しました。電子機器、ガスタービン、航空宇宙分野からの新たな需要が価格を押し上げており、供給制約と地政学的リスクも影響しています。供給量が極めて限定される中での旺盛な需要は、金属業界全体に緊張をもたらしています。


供給が限られる中で高まるハフニウム需要

ハフニウムの価格は、99%以上純度のスポット取引で1kgあたり5,100~5,800ドル(税抜ロッテルダム条件)に上昇しました。これはわずか1週間で24%、9月末から38%の急伸であり、2023年末以来の高水準です。電子産業や超合金市場が競って買いに動いた2022年末~2023年前半の価格急騰時を彷彿とさせますが、今回は一定量の在庫が市場に残っています。

それでも、2026年第一四半期向けの長期・スポット契約需要がすでに発生しており、供給が追いつかない懸念が市場に広がっています。世界の純粋なハフニウム金属の年間供給量はわずか70〜75トン程度で、主にフランス、アメリカ、中国、ロシアの4カ国に集中しています。あるトレーダーは「市場には12トンの超過需要が存在するが、これを満たす供給源がない」と語っています。


半導体・AI・ガスタービンが引き起こす新たな需要サイクル

ハフニウム金属とハフニウム酸化物は、特に半導体、メモリ技術、超合金に不可欠な材料として知られています。AIの発展とメモリ容量の増加ニーズにより、ハフニウムの使用は今後さらに拡大する見通しです。特に電子、通信、自動車、産業用機器の各分野での半導体需要の高まりが、ハフニウム消費を加速させています。

また、AIデータセンター向け電源の一環として、ガスタービン需要が世界的に急増中です。ハフニウムはタービン用超合金の重要構成要素であり、2024年のタービン注文量は約80GWに達し、過去20年以上で最大となりました。一方で、GE Vernova、Siemens Energy、三菱重工の3社を合わせた生産能力は30GWにとどまり、明確な供給ギャップが存在します。


中国の輸出規制と欧米供給網の脆弱性

短期的には、ハフニウム供給の制約が続く見通しです。特に中国からの輸出が急減しており、西側諸国の調達に影響を与えています。2024年以降、中国政府は「軍民両用」金属への新たな輸出規制を導入し、エンドユーザーと用途の明示を義務付けています。輸出許可が得られないケースもあり、事実上の「シャドウバン(事実上の禁止)」と見る向きもあります。

2024年10月以降、中国からの輸出許可を取得できていない業者もある一方、8月にライセンスを取得したトレーダーも存在し、完全な禁輸ではありません。ただし、ある関係者は「米国の新規トレーダーが許可を得るのは極めて難しい」と警告しています。

米国は2023年に中国からハフニウム金属・スクラップ・粉末を計7,805kg輸入しており、中国の全輸出の30%を占めていました。しかし、2024年4月以降は関税引き上げの影響で取引が急減しました。

主産地であるフランスも2024年に生産問題を抱えており、今後数ヶ月かけて復旧が進む見込みですが、供給は引き続きタイトになると予想されます。


金属フォーカス 編集部コメント

ハフニウムは小規模な市場ながら、半導体やエネルギー転換の要となる戦略的金属です。中国の輸出規制と需要急増が価格を押し上げ、サプライチェーン全体の脆弱性を露呈させています。長期的な供給多様化と戦略備蓄の必要性が、今後一層高まるでしょう。


コメントを投稿