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Brazil hot rolled coil |
2025年9月、ブラジルの熱延鋼板(HRC)輸入量が前年同月比で大幅に減少しました。特に中国からの輸出が83%減少し、同国の輸入構造に変化が生じています。貿易政策の影響により、韓国やエジプトなど他国からの代替供給が進むなか、ブラジルの鋼材市場にとって重要な転換点を迎えています。
中国からの供給減がHRC輸入全体を押し下げる
2025年9月のブラジルのHRC輸入量は88,657トンとなり、前年同月の105,022トンから減少しました。中でも、中国からの輸入は14,182トンにとどまり、前年の85,791トンから大幅に縮小しました。これは83%の急減であり、輸入全体の落ち込みを大きく牽引しました。
しかしながら、累計では1月から9月までの輸入量が前年同期比で63%増の848,413トンに達しており、その中で中国産は約50%の421,650トンを占めました。これは、年初から続く堅調な輸入を反映していますが、足元では対中依存の低下が鮮明です。
韓国・エジプトなど新たな供給元が台頭
韓国は9月に45,626トンをブラジルに出荷し、同月の輸入全体の半分以上を占めました。また、エジプトからのHRC輸入も急増しており、2025年1月〜9月で108,265トンに達し、前年の18,555トンから大きく増加しました。
この背景には、2024年に導入されたブラジルの25%関税枠政策と、エジプトとの2017年からの二国間関税緩和協定が作用しています。こうした政策支援により、エジプトは2025年に入り、ブラジルの第3位のHRC供給国となっています。
イタリアからの輸入も9月には363トンと前年の43トンから増加し、トルコからも前年ゼロだった輸入が123トン発生しました。これは、ブラジルの輸入先多様化の兆候といえるでしょう。
貿易政策とアンチダンピング調査が市場に影響
中国製鋼材に対するアンチダンピング調査や、輸入鋼材に対するセーフガード措置の強化が、ブラジル市場の供給源シフトを加速させています。これにより、輸入業者や商社はリスク回避のために新たな供給先を積極的に開拓しています。
その結果、韓国やエジプトなど安定供給が可能な国々からの出荷が拡大し、ブラジルの熱延鋼板市場は新たな構造へと移行しつつあります。今後、これらの国々との貿易関係の継続性とコスト競争力が、輸入動向を左右する重要なファクターとなるでしょう。
金属フォーカス 編集部コメント
中国依存度の高かったブラジルのHRC輸入構造が、貿易政策と地政学的リスクの影響で再編されています。エジプトや韓国との連携強化は中長期的な安定供給に寄与する一方で、輸入コストの上昇リスクには引き続き注意が必要です。