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Japan Scrap |
為替とアジア需要が価格上昇を後押し
2025年10月、日本のスクラップ輸出価格が9か月ぶりの高水準に達しました。関東鉄源協同組合による定例輸出入札で、H2グレードの鉄スクラップ2万トンが1トンあたり44,316円(FAS条件)で落札され、前月比で2,346円上昇しました。この価格はFOB換算で45,316円となり、市場の予想を大きく上回る結果となりました。
主因は急激な円安で、ドル建て価格は前月比5ドル増の289ドルにとどまった一方、円建て価格は大幅に上昇しました。10月10日時点での為替レートは1ドル=152.86円と、前週末比で3.7%も円安が進行。為替効果によって、日本産スクラップは国際市場で価格競争力を維持しやすい環境が整いつつあります。
輸出先は主にバングラデシュ、他のアジア勢は調整局面
今回落札された貨物はバングラデシュ向けと見られ、CFR価格は1トンあたり345〜350ドルと試算されています。一方、他のアジア市場ではこの価格が受け入れ可能水準(CFRで約330〜335ドル)を約15ドル上回っており、広域的な価格適応には時間を要するとの見方もあります。
こうした価格上昇に反応し、東京製鉄は高松工場を除く全工場で鉄スクラップの購入価格を1,000円引き上げました。輸出市場の強気なセンチメントを背景に、日本のトレーダーも今後のオファー価格を引き上げる動きを強めると予想されます。
国内外市場への影響と今後の展望
10月8日時点でのH2スクラップのFOB価格は1トンあたり42,000円、9月の月間平均は41,814円でした。為替の影響に加え、アジア市場(特に南アジア)からの堅調な需要が、今後も日本のスクラップ輸出価格を支える可能性があります。
輸送コストの上昇が引き続き懸念される中、円安による価格優位性がどこまで維持されるかが焦点です。加えて、韓国や台湾など他のアジア主要市場の動向も、価格調整の鍵を握ります。
金属フォーカス 編集部コメント
10月の関東鉄源入札は、円安と南アジア需要が鉄スクラップ輸出価格を押し上げる典型的な事例です。為替と地域需要のバランスが、アジア鉄リサイクル市場の価格動向に一層影響を与えるでしょう。中長期的には、物流コストと国内需給も価格に与える影響が増すと見られます。