LMEのニッケル危機からの回復と金属市場の活況:2025年の展望

LME Nickel


ロンドン金属取引所(LME)は、2022年3月のニッケル契約破綻危機から3年以上を経て、市場の混乱を乗り越え、再び堅調な成長軌道に乗っています。LMEは148年の歴史を持ち、香港取引所の傘下にありながら、サウジアラビア・ジェッダ港や香港に新たな倉庫を開設し、ニッケルの取引量は危機前の水準に回復しました。今回の記事では、LMEの回復状況と今後の金属市場の展望に焦点を当てます。


LMEの市場改革と取引活性化

LMEはニッケル危機を受けて、金融行動監視機構(FCA)から厳しい指摘と罰金を科されましたが、積極的な市場改革に取り組んでいます。特に、電子取引プラットフォームの流動性向上を狙いとしたブロック取引の閾値設定や、オプション取引の電子化を進めています。これにより、上海先物取引所(ShFE)や米国CMEといった競合市場に比べて遅れていたLMEのオプション市場の活性化が期待されています。

一方で、オフィス間取引の柔軟性を残し、会員企業や産業ユーザーの要望に応えています。また、OTC市場における「類似」契約への手数料引き上げを通じて市場の透明性向上を図っています。


金属需給の混乱がもたらす取引量の増加

2025年に入ってからも、世界的な金属サプライチェーンの混乱が続き、LMEの取引量は活発化しています。特に米国が銅の精錬品に対する輸入関税導入を検討した影響で、銅の在庫移動が活発化し、LMEの銅取引は前年同期比で約2.4%増加しました。これに対し、CMEの銅取引量は39%減少しており、LMEの国際的かつ産業寄りのユーザーベースの強さが示されています。

また、鉛やニッケルの市場では過剰供給により在庫が増加し、LME倉庫の金属保管量が数年ぶりの高水準に達しています。これに伴い、ファイナンス取引も活性化しています。注目すべきは、これまで低迷していたコバルト契約の取引が急増し、2025年には1,755トンもの金属がLME倉庫に移動したことです。


銅価格の強気相場とLMEの未来

LME 3ヶ月物銅価格は2025年に入り、1トンあたり11,000ドルの水準に達し、2024年5月の史上最高値11,104.50ドルに迫っています。銅は市場の「ドクター」とも称される重要金属であり、その強気相場はLME市場全体の活況を象徴しています。

今後のLMEは、取引の電子化推進とポジション管理の強化を通じて市場の信頼性を高めつつ、世界的な金属需給の不確実性を背景にさらなる成長が期待されます。


金属フォーカス 編集部コメント

LMEのニッケル危機後の改革は、金属市場の透明性と取引の効率化に資すると同時に、世界的なサプライチェーンの不安定化に対応する柔軟な市場運営の必要性を示しています。特に銅やコバルトなど重要鉱物の活況は、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー市場の拡大を反映しており、LMEは今後も産業動向に即応した商品設計と市場整備を進めることが重要です。


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