CMOCの成長戦略:不確実性の中で拡大を続ける世界最大のコバルト生産企業

CMOC


中国の大手資源企業CMOC Group(旧:中国モリブデン)が、地政学的リスクや政策変動の中でも、積極的な成長戦略を打ち出しています。同社は世界最大のコバルト生産企業であり、銅・モリブデンの有力供給者としても知られています。2025年10月10日に開催された「FT Metals and Mining Summit」で、会長兼CIOの劉建峰氏は、コンゴ民主共和国(DRC)での政策対応、世界展開、そして中国経済の見通しについて語りました。


DRCでの政策変更とCMOCの柔軟な対応

CMOCは、アフリカ・コンゴ民主共和国に保有する巨大鉱山「Tenke Fungurume(TFM)」を通じて、銅とコバルトを大量に生産しています。近年、同国政府が導入したコバルト輸出割当制度は、業界に懸念をもたらしました。しかし、劉氏は「コバルトは銅生産の副産物であり、価格の高い銅が収益を支えている」と述べ、事業への影響を最小限と評価しました。

加えて、同社は一時的に過剰となるコバルトを在庫化し、市場回復時に備える戦略的柔軟性を発揮しています。これにより、資源ナショナリズムが進む中でも、CMOCは現地規制に適応しながら安定した供給体制を維持しています。


世界展開と銅・金への集中投資

CMOCは、TFM鉱山に次ぐ大規模鉱山プロジェクトの取得を模索しており、それが実現すれば「世界トップ3の銅生産者」に躍進する可能性もあります。同社は現在、銅と金を中期的な成長の柱と位置付け、特に断片的な市場構造を持つ金分野での拡大に注目しています。

一方で、注目を集めるリチウムについては、「供給過剰と価格変動のリスク」が高いため、現時点では慎重な姿勢を取っています。CMOCは、実体的な価値を生む資産への投資を優先しており、資本投機よりも生産能力と供給安定性を重視しています。


トレーディング機能とグローバル市場戦略

CMOCのユニークな点は、2019年に買収した国際商社IXM(旧Louis Dreyfus金属部門)を活用し、ロンドン・米国・豪州などに商流拠点を構築していることです。この統合により、同社は鉱山会社でありながらマーケットインサイトと物流力を兼ね備える存在となりました。

劉氏は「製造業における“スマイリングカーブ”の考え方を採用しており、生産とマーケティングの両端を強化する戦略を取っている」と述べ、技術と市場理解の両立を強調しました。これにより、CMOCは他の中国鉱山企業とは一線を画すビジネスモデルを確立しています。


金属フォーカス 編集部コメント

CMOCの成長戦略は、単なる資源開発を超えたバリューチェーン全体への統合的アプローチを象徴しています。特に、グローバル規制環境や市場変動に対する適応力は、今後の鉱業企業に求められる重要要素です。今後の動向は、銅・コバルト市場の安定供給体制と中国資本の国際展開の指標として注視すべきです。

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