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Capstone Copper |
カプストーンの資金調達強化と開発促進を狙う大型JV契約
カナダのカプストーン・カッパー(TSX:CS、ASX:CSC)は、プライベート・エクイティのオリオン・リソース・パートナーズにチリのサント・ドミンゴおよびシエラ・ノルテ銅鉱山プロジェクトの25%を約3億6,000万ドルで売却する契約を締結した。この取引により、カプストーンはサント・ドミンゴにおける初期資本負担を軽減し、アタカマ地域のマントベルデ-サント・ドミンゴ地区全体の開発・探査資金を強化できる見込みだ。
オリオンは最終投資決定(FID)後に2億2,500万ドルを支払い、6カ月以内に追加で7,500万ドル、さらにマイルストーンに応じて最大6,000万ドルの支払いを行う。また、新株10百万ドル分を5%のプレミアムで購入し、両プロジェクトの短期的探査を支援する。
カプストーンCEOのカシェル・ミアガー氏は、サント・ドミンゴを「次の成長の柱」と位置付け、低コストでの生産が見込まれることや、マントベルデからわずか35kmの近接性を強調した。同氏はマントベルデ建設に携わったチームが同プロジェクトの建設・操業を担当すると述べている。
オリオンの最高投資責任者イシュトヴァン・ゾレイ氏も、カプストーンの質の高い銅資産開発能力と世界的なエネルギー転換に合致した資産価値に自信を示した。
この取引により、カプストーンのサント・ドミンゴに対する自己資本負担は約4億ドルに抑えられ、プロジェクトファイナンスや持ち分按分の貢献を想定している。加えて、商業生産開始後にカプストーンが全所有権を買い戻せる権利も保持し、オリオンの一定リターンを保証する条件が付く。
取引成立後、オリオンのカプストーン株式保有比率は11.9%から約12%へと上昇する見込みだ。
評価割安感とリスク要因
ジェフリーズのアナリストは、本取引が割安である可能性を指摘。管轄リスクやプロジェクトの複雑性、買い戻し条項などが割安評価の背景として挙げられる。比較対象として、三菱商事がアリゾナの銅鉱山「コッパーワールド」プロジェクトの30%を6億ドルで取得した取引の方が高い価格純資産倍率(P/NAV)を達成しているとした。
ジェフリーズは、ホイートン・プレシャスメタルズとの既存のストリーム契約を考慮したサント・ドミンゴの純資産価値(NAV)を16億ドルと評価し、オリオンの25%持分は約4億800万ドル相当と試算している。
今回の初期支払い2億2,500万ドルは0.6倍のP/NAV倍率に相当し、条件付き支払いを含めると0.7倍に上昇するという。
この取引は10月14日(月)に発表され、翌15日(火)にはオーストラリア市場でカプストーン株価が3.43%上昇し、14.50豪ドルで取引を終えた。トロント証券取引所はカナダの感謝祭で休場していた。カプストーンの時価総額は約97億カナダドル(69億米ドル)である。
金属フォーカス 編集部コメント
カプストーンの今回の資本提携は、銅市場の成長と開発加速に向けた重要な戦略的布石となる。特に、アタカマ地域における低コスト資産の開発資金を効率化する点で業界に波及効果をもたらすだろう。今後の市場動向や買い戻し権の行使動向にも注目が集まる。