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Silver Prices |
銀市場の過熱感が後退、価格は一時的に反落
2025年10月14日、ロンドンの銀現物市場では、数週間にわたる異常な価格上昇にひと段落が見え始めた。銀価格は一時的に3.6%下落し、週初に記録した過去最高値53.55ドルから反落。短期的な過熱感と需給のひっ迫によるショートスクイーズが緩和されつつある兆しが強まっている。
ロンドンとニューヨーク間の価格差が縮小、輸送コストにも変化
ロンドン市場の流動性不足が、世界的な銀の争奪戦を引き起こしていた。特にニューヨークとの間で銀の価格差が拡大し、一部のトレーダーは航空便を使って銀地金を輸送する事態にまで発展。通常は金でしか使われないこの高額な輸送手段が選ばれたのは、ロンドン市場のプレミアム価格を狙った裁定取引(アービトラージ)のためだ。
複数のトレーダーによれば、これらの銀地金は今後数日から数週間にかけてロンドンに到着予定であり、すでに価格差は大幅に縮小。ロンドン市場での**銀の貸借コスト(リースレート)**も下落傾向にあり、過去数日の極端な価格形成が落ち着きを見せ始めている。
投資需要とインドの実需が供給不足を助長、政策リスクも依然として懸念材料
インドからの急激な実需増加や、銀ETF(上場投資信託)への資金流入が、ロンドン市場の流通在庫を圧迫してきた。今年初めには米国による関税懸念から、銀の多くがロンドンからニューヨークに移送された経緯もあり、市場は依然として脆弱な状態だ。
現在も米国では通商拡大法232条に基づく重要鉱物調査が継続中であり、銀・白金・パラジウムなどが新たな関税対象になる可能性がある。こうした政策リスクが、投資家やトレーダーの神経質な取引を促している。
加えて、ゴールドマン・サックスは「銀市場は流動性が低く、金市場の9分の1規模に過ぎない。中央銀行による買い支えがないため、投資資金の引き上げが価格急落に直結する」との警告を発している。
金属フォーカス 編集部コメント
今回の銀価格の反落は、過熱状態にあったロンドン市場の需給バランスがようやく落ち着き始めたことを示唆している。ただし、政策リスクや物流のひっ迫、投資資金の動向次第では再び急騰リスクも残る。今後は実需と制度的要因の両面からの監視が重要となる局面だ。