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| Rare Metal |
政府支援を狙う鉱物企業がワシントンで存在感を強める
米国が重要鉱物分野への国家的投資を強化する中、多くの鉱物関連企業がワシントンD.C.でのロビー活動を加速している。レアアース、リチウム、銅、アンチモン、スカンジウム、タングステンなどの資源に関わる企業が、連邦政府からの資金支援や優遇措置の獲得を狙って動いている。
ロイターの調査によれば、2025年1月以降、少なくとも12社以上の鉱物企業が大手ロビイング会社と契約を結んでいる。対象企業には、Lithium Americas(リチウム・アメリカズ)、MP Materials(MPマテリアルズ)、NioCorp(ニオコープ)、United States Antimony(米国アンチモン)、Critical Metals Corp.、さらには**韓国のKorea Zinc(韓国ジンク)**などが含まれる。
株式取得・融資・契約確保へ:多角的な支援を引き出す戦略
米国政府はこれまでの補助金中心の産業政策から、出資や長期調達契約による支援へと戦略を転換している。例えば、Lithium Americasは7月にGuidepost Strategies社とロビー契約を結び、米政府に5%の株式を提供する代わりに22億6000万ドルの融資を確保した。これはGeneral MotorsとのThacker Passリチウム開発プロジェクトにおける資金調達の一環だ。
また、NioCorpはネブラスカ州でスカンジウム鉱山を開発中で、国防総省から1000万ドルの支援金を獲得し、さらに輸出入銀行から8億ドルのローン審査を受けている。Jim Sims副社長は、「議員に我々の技術的意義を理解してもらうには、現場での説明が不可欠だ」と述べた。
政治との連携が企業評価にも直結
このような動きは株式市場にも強い影響を与えている。Sprott Lithium Miners ETFは過去1か月で35%以上上昇し、投資家が政府と連携する企業に注目していることがうかがえる。
さらに、2024年米大統領選に向けてトランプ陣営の資金調達責任者であるBrian Ballardが運営するBallard Partners、元内務長官David Bernhardtが率いるThe Bernhardt Groupなど、政治的影響力のあるロビイストが多数登場しており、鉱物産業の政策決定への関与が一段と深化している。
一方、米国アンチモン社は2024年9月、国防兵站庁(DLA)との間で2億4500万ドルの契約を締結。これは昨年11月にCassidy & Associatesと契約して以降のロビー活動の成果とされる。
金属フォーカス 編集部コメント
米国政府の戦略的な資源政策シフトは、従来の市場原理に依存しない新たな官民連携モデルの台頭を示している。鉱物企業は単なる供給者ではなく、政策形成に影響を与えるプレーヤーとして位置づけられ始めている。日本を含む各国も、こうした動きに迅速に対応する必要がある。


