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| Global mining industry |
世界の鉱業界は、2026年に向けて「オペレーショナル・コンプレキシティ(運用の複雑化)」が最大のビジネスリスクとして浮上しています。EYが実施した「Top 10 Business Risks and Opportunities」調査によると、この課題は従来の戦略的・地政学的リスクから、直接的に生産性やコストに影響する短期的な運用リスクへのシフトを示しています。
運用の複雑化が鉱業の中心課題に
EYの調査は世界500人の鉱業幹部からの回答に基づいています。鉱山の深度が増し、鉱石品位が低下し、投入コストが上昇する中、鉱山運営は従来のやり方を変革する必要性が強まっています。EYのグローバル鉱業・金属リーダーであるポール・ミッチェル氏は、「運用の複雑化は不確実性だけでなく、従来の運営方法を破壊しなければならないという認識の表れだ」と述べています。加えて、「鉱山の老朽化や代替鉱山の開発に伴い、複雑さは今後も増大し、コスト管理と生産性向上の必要性がさらに高まる」と指摘しました。
鉱業企業は特に、安定的な生産性の確保を通じて投資家の信頼を維持し、資本を呼び込むことに注力しています。大規模なM&Aが困難な状況下、既存資産からの価値最大化に向けて運用効率や技術統合に焦点を当てる動きが強まっています。
成長志向と投資戦略の変化
鉱業界は3年連続で成長に向けた資本配分を増やし、株主還元を削減しています。従来型・代替型を問わず投資家は、この成長戦略を支持しています。特に銅市場では供給不足の懸念が高まり、「世代を超えた」投資機会として注目されています。
ミッチェル氏は、「大型M&Aが難しいため、鉱業企業は既存資産の生産性向上や資本規律、技術導入に注力して高価格の恩恵を受けようとしている」と述べました。一方、小規模買収やジョイントベンチャー、ロイヤリティ契約やストリーミング取引、持続可能なファイナンス、政府のインセンティブ活用も模索されています。
社会的許認可(LTO)とデジタルトランスフォーメーションの重要性
鉱業界の「ライセンス・トゥ・オペレート(LTO)」リスクは依然として重要課題です。政府支出の減少に伴い、鉱山企業は地域社会との信頼関係強化に注力しています。資源ナショナリズムの台頭やESG規制強化もこの課題を後押ししています。
また、デジタル化とAIの導入が加速しており、調査では21%の幹部が来年度のAI投資を20%以上増やす計画と回答しました。ミッチェル氏は、「AIは単なる導入で終わらず、デジタル戦略と人材育成を統合し、企業全体で活用することが成功の鍵」と述べています。
金属フォーカス 編集部コメント
鉱業界は複雑化する運用課題に直面しながらも、成長志向の資本配分と技術革新で競争力を高めています。今後は、地域社会との信頼構築とデジタル統合が企業価値の分かれ目となるでしょう。銅を中心に投資機会が拡大する中、戦略的柔軟性が求められます。


