高関税の不確実性がメキシコ鉄鋼・スクラップ市場を圧迫

Mexico steel and scrap market


2025年上半期、メキシコ鉄鋼・スクラップ市場は大きな圧力にさらされました。米国の高関税政策により、メキシコから米国への鉄鋼輸出と、米国からメキシコへの鉄スクラップ輸入が大幅に減少しました。この貿易の流れの変化が、メキシコ国内市場の不確実性を高めています。


米国の関税強化が鉄鋼輸出を急減させる

ドナルド・トランプ米大統領は3月12日に25%の鉄鋼輸入関税を課し、6月4日にはこれを50%に引き上げました。その結果、2025年上半期のメキシコから米国への鉄鋼輸出は17%減少しました。メキシコは2019年からUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の下で関税を免除されていました。しかし、米国が買い手としての役割を果たせなくなり、メキシコ国内市場に圧力がかかっています。カナセロ(Canacero)によると、2025年上半期のメキシコの鉄鋼消費量は前年同期比で8%減少しました。これは、前政権が進めた大規模インフラプロジェクトが一段落したことも一因です。


鉄スクラップ輸入の激減と国内価格への影響

メキシコ国内の需要停滞は、鉄スクラップ市場にも波及しました。米国からの鉄スクラップ輸入は、2025年上半期に前年同期比56%減の44万700トンにまで落ち込みました。メキシコの主要な鉄鋼メーカーは電炉(EAF)を操業しており、鉄スクラップは主要な原料です。そのため、原料調達コストが不安定化しました。しかし、テキサス州の鉄スクラップ市場の価格が横ばいで推移したことにより、メキシコのメーカーには価格交渉の余地が生まれました。その結果、米国とメキシコの鉄スクラップ価格差は縮小し、メキシコのメーカーは一息つくことができました。


金属フォーカス 編集部コメント

米国の関税政策は、メキシコの鉄鋼産業と密接な関係にある鉄スクラップ市場の両方に大きな打撃を与えました。今後、シェインバウム新政権が掲げる住宅建設やインフラ整備が実現すれば、国内需要が回復し、市場の圧力が軽減される可能性があります。しかし、財政赤字や投資の減少が課題となっています。米国の貿易政策とメキシコの国内経済動向が、今後の鉄鋼・スクラップ市場の行方を左右する重要な鍵となるでしょう。


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