米国鋼材市場、安定期に突入:リサイクル鋼価格の堅調な推移

 
米国の鋼材市場

米国の鋼材市場は現在、安定した状態を維持しています。特にリサイクル鋼の価格は、この数ヶ月間、小幅な変動に留まっています。この安定性は、国内外の需要と供給のバランスが取れていることを示しています。


ピッツバーグを拠点とするMSA Inc.のRaw Material Data Aggregation Service (RMDAS) のデータは、この傾向を明確に裏付けています。4月中旬から6月中旬までの60日間、主要な3種類のリサイクル鋼の取引価格は1トンあたり5ドル以内の範囲で推移しました。例えば、国内ミルが支払うNo. 1ヘビーメルティングスチール(HMS)の全国平均価格は、5月中旬から6月中旬にかけての買い付け期間で、前月比わずか1ドル上昇しました。さらに、RMDASが追跡するもう一つの廃鋼ベンチマークであるNo. 2シュレッドスクラップは、5月と6月に1トンあたりわずか2ドル上昇しました。


地域ごとの価格差も限定的です。5月21日から6月20日までの買い付け期間では、RMDASノースミッドウェスト地域のミルはプロンプトスクラップに1トンあたり447ドルを支払い、一方、南部のバイヤーは同様の出荷に対して434ドルを支払いました。この13ドルの差は、今月の地域間における最も大きな差額でした。No. 1 HMSとNo. 2シュレッドスクラップについては、地域間の差額はわずか6ドルに留まっています。この安定したリサイクル鋼市場は、サプライチェーン全体の健全性を示唆しています。


国内生産と海外需要が市場を牽引

トレーダーは次の国内ミル買い付け期間に備え、米国の鉄鋼生産量と海外のスクラップ需要に注目しています。6月の第3週には、米国の製鉄所が約80%の稼働率で操業し、約179万トンの鉄鋼を生産しました。これは2024年6月の第3週と比較して4.9%の増加です。ワシントンを拠点とする米国鉄鋼協会(AISI)のデータによると、6月21日までの週の生産量は前週比0.2%増加しています。国内生産の堅調な推移は、リサイクル鋼の安定した需要を裏付けています。


一方で、輸出業者からの入札急増は、国内市場の供給に圧力をかける可能性があります。デイビス・インデックスは、6月第4週のトルコやインドなどへの輸出業者とバイヤー間の取引状況を「横ばい」と表現しています。ただし、6月23日のデイビス・インデックスのレポートでは、トルコのバイヤーからの新たな関心が米国とヨーロッパの一部売り手間で「強気なセンチメント」を引き起こしていると述べています。インドのバイヤーからのリサイクル鋼の提示価格は横ばいで推移しており、大量貨物とコンテナ輸送の双方でインドのバイヤーの鉄スクラップに対する意欲は限定的です。


フォカス 編集部コメント

現在の世界の粗鋼生産量の減少は、グロバル経済の減速と地政的リスクが複合的に作用した結果と見られます。特に州における生産調整は、エネルギコストや環境規制の化が背景にあるでしょう。しかし、一部の地域での生産加は、需要構造の化やサプライチェンの再編を示唆しており、今後の市場動向を注意深く見守る必要があります。

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