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2025年5月、世界の粗鋼生産量は前年同月比で3.8%減少し、1億5,880万トンとなりました。ワールドスチール協会が発表したデータは、この顕著な落ち込みを示しています。しかし、前月比では2%増加しており、市場の複雑な状況を浮き彫りにしています。この数字は、特に中国における生産調整が大きく影響しています。
主要生産国の明暗と地域ごとの動向
主要生産国の動向は、この減少傾向を裏付けています。中国の粗鋼生産量は8,660万トンで、前年比6.9%の減少を記録しました。一方で、インドは1,350万トンで9.7%増加し、ブラジルも270万トンで5%増加するなど、一部の国は生産を拡大しています。米国も700万トンを生産し、前年比1.7%の増加を示しました。CIS諸国とウクライナの合計生産量は700万トンで、前年比8.1%減となりました。特にウクライナは63万5,800トンで13.8%減少しました。主要な経済圏における鋼材需要の変動が、世界の粗鋼生産量に直接影響を与えています。
ドイツの生産減が示す欧州市場の圧力
ドイツの鋼材生産動向は、欧州市場の課題を象徴しています。ドイツの粗鋼生産量は2025年5月に298万トンとなり、前年同月比で6.4%減少しました。これにより、同国は5ヶ月連続で前年比減少を記録しています。酸素転炉での生産量が1.94百万トンで13.1%減少する一方で、電気炉での生産量は1.04千トンで9.3%増加しました。銑鉄生産量も1.83百万トンで9.8%減少しています。これは、ドイツが排出量削減目標に向けて、より環境負荷の低い生産方法への移行を進めている可能性を示唆しています。ドイツ鉄鋼連盟(WVStahl)は、「ドイツの鉄鋼生産は依然として圧力下にあります」とコメントしています。
長期トレンドと市場の複合要因
2025年1月から5月までの累計では、世界の粗鋼生産量は前年比1.3%減の7億8,400万トンとなりました。この期間、ドイツの粗鋼生産量も1,443万トンと10.8%減少し、特に酸素転炉での生産は14.2%の大幅な落ち込みを見せました。また、GMKセンターの報告によれば、2024年の世界の粗鋼生産量も2023年比で0.9%減の18億3,900万トンでした。これらのデータは、グローバルな鋼材市場が均一ではなく、地域ごとの経済状況や産業構造が生産量に大きな影響を与えていることを示しています。
金属フォーカス 編集部コメント
ドイツの鉄鋼生産量の継続的な減少は、欧州の産業構造転換と経済の不確実性を反映しています。特に、環境規制強化に伴う電気炉へのシフトは進むものの、全体の生産量回復には需要の本格的な回復が不可欠です。今後、欧州連合のグリーン政策とエネルギー市場の安定が、ドイツ鉄鋼業の行方を大きく左右するでしょう。