ドイツ、EUにアルミスクラップ輸出関税の導入を要請

アルミスクラップ

米国の一次アルミ関税で価格差拡大 欧州の循環経済に打撃懸念

ドイツのアルミ業界団体「Aluminium Deutschland(AD)」は、EUに対しアルミニウムスクラップの輸出に関税を課すよう求めている。背景には、米国が一次アルミ輸入に25%の関税を課す一方で、スクラップは対象外としていることがある。

この措置により、米国の需要家は割安なスクラップ調達にシフトする可能性が高く、欧州からの流出が懸念されている。とくにリサイクラーにとって安定供給が前提となる中、供給逼迫は欧州の循環経済政策を根底から揺るがしかねない。

ADのロブ・ファン・ヒルス会長は、「過去数十年の循環インフラの成果が無に帰す恐れがある」と警告し、「迅速かつ断固たる行動」が必要だと主張する。

価格差の拡大が輸出圧力に拍車をかけている。2024年11月時点で米EU間のアルミプレミアム格差は110ドル/トンだったが、2025年5月初旬には700ドル/トン近くまで急騰した。これにより、業者がより利益の出る米国市場へスクラップを振り向ける動きが加速している。

さらに、欧州のアルミスクラップ供給はすでに逼迫気味だ。産業活動の低迷で新たなスクラップ発生量が減少している一方、アジア需要の強さが重なり、世界市場での調達競争が激化している。

このままでは、欧州の脱炭素化目標や資源安全保障にも深刻な影響を及ぼす可能性がある。ADの主張は、原材料を巡る地政学的競争の中で、スクラップ政策が気候政策の成否を左右する重要な要素になりつつあることを象徴している。

コメントを投稿