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EUは独自交渉進まず、報復措置も視野に 英国は輸入枠見直しへ
欧州鉄鋼業界では、英国が初めて米国と鉄鋼貿易に関する合意を交わしたことで、世界的な通商摩擦緩和への期待が高まっている。米国は232条関税(25%)を英国産鉄鋼に対し撤廃すると5月8日に発表したほか、自動車輸入10万台までは関税を10%に引き下げる。
さらに、5月12日には米中間でも一部関税の90日間の緩和が発表され、米国が中国製品(鉄鋼除く)への関税を145%から30%へ、中国も米国製品に対する関税を125%から10%に引き下げた。
EUとの交渉は難航、報復措置も準備
しかし、EUが米国と同様の合意に達する兆しはない。2024年のEU産鉄鋼の対米輸出は389万トンで、英国の16倍超に達している。欧州委員会は米国産鉄鋼に対する報復措置リストの意見募集を開始するとともに、鉄スクラップの対米輸出制限についても検討を進めている。
EU内では需給が軟化しており、MEPSの調査では「引抜線材」を除き価格は軒並み下落した。欧州メーカーにとって米国市場のアクセス維持は死活問題だ。
英国は輸入枠見直し、特定国依存を是正へ
英国の貿易救済庁(TRA)は5月13日、鉄鋼輸入セーフガードの改正案を公表。カテゴリー4(溶融亜鉛メッキ鋼板)、7(クォート圧延鋼板)、13(異形棒鋼)について、1国の使用上限を40%に制限する案を提示した。2024年には、ベトナムや韓国、アルジェリアが各カテゴリーで6〜8割を占めていた。
未使用枠の翌四半期繰越制度や残余枠の開放措置は撤廃される見込みで、7月1日から順次導入が予定されている。ただし、7月1日の3%枠拡大(TRQ自由化)は継続する。
この見直しにもかかわらず、EUやアジアの生産者が米国市場を失った場合、英国は代替輸出先として依然重要視される可能性が高い。
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