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Rosneft |
中国依存脱却を狙い、国家戦略資源の開発を加速
ロシア最大の石油企業ロスネフチ(Rosneft)は、シベリア・ヤクーチア北部に位置する同国最大のレアアース鉱床「トムトル(Tomtor)」の開発権を完全に掌握した。2025年5月20日、ロシア国家企業登記簿によれば、ロスネフチは同鉱床の運営会社であるヴォストーク・エンジニアリング(Vostok Engineering)を完全子会社化した。
ロスネフチを率いるイーゴリ・セーチン氏は、プーチン大統領の長年の側近としても知られる。今回の買収は、同大統領が2024年にレアアース開発の遅延を批判し、国家支援や他社からの資本導入を呼びかけた背景を受けたものである。
国家資源戦略の要、2030年までに世界シェア12%へ
トムトル鉱床は、携帯電話や電気自動車、さらには防衛用途にも不可欠なレアアースの戦略的供給源として位置づけられている。ロシア政府は中国依存からの脱却を掲げ、2030年までに世界市場の最大12%を占めるレアアース供給国となる目標を掲げている。米国地質調査所(USGS)によると、ロシアのレアアース埋蔵量は380万トンで、世界第5位に位置する。
ウクライナ紛争以前、ロシアはレアアース分野に15億ドルの投資を予定しており、中国に次ぐ生産国を目指していた。他国も同様に、中国が全世界の95%を支配するレアアース供給網からの脱却を急いでいる。
所有権の変遷と政情の影響
トムトル鉱床の前運営会社ThreeArc Miningは、ポリメタル(Polymetal)の元主要株主であるアレクサンドル・ネシス氏が率いるISTグループが75%を保有していた。また、ポリメタルも9.1%を保有していた。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴う西側諸国の経済制裁の影響で所有構造は変化し、ISTの元幹部ウラジスラフ・レジン氏の管理下を経て、最終的にロスネフチが完全に取得した。
ロスネフチによるトムトル掌握は、エネルギー大手がレアアースという非エネルギー分野へ本格参入する象徴的な動きでもあり、ロシアの資源外交戦略の一環として注目される。
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