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Rio Tinto |
鉱山アクセス向上でレアメタル輸送網を整備、リチウム供給網構築を加速
カナダ・ケベック州政府は、北部鉱業地域の経済開発を加速するため、5年間で26億カナダドル(約2,600億円)を投じる「北部行動計画2023–2028(Northern Action Plan)」を実行中だ。最新の施策として、マタガミ積替拠点のインフラ改修に620万カナダドルを融資することを決定した。
このプロジェクトは、州営機関ソシエテ・デュ・プラン・ノール(Société du Plan Nord)が主導。積替施設の土木工事と鉄道機材の導入により、北部ケベック(Nord-du-Québec)地域の鉱山企業向け輸送能力、信頼性、効率を強化する。
鉱山会社も出資、リチウム供給網の強化を目指す
この投資にはリオ・ティント(Rio Tinto、ASX:RIO)とネマスカ・リチウム(Nemaska Lithium、TSX:NMX)も300万カナダドルを共同出資。複数社が利用可能な輸送インフラとして開発が進められる。
マイテ・ブランシェット・ヴェジナ天然資源・森林大臣は、「特にリチウム分野での新規鉱山開発を支援する鉄道整備により、重要鉱物産業の成長を現実のものとする」と語った。
カナダ政府によると、ケベック州全体の鉱業投資の90%以上が、北部ケベック、アビティビ=テミスカマン、コート=ノール地域に集中。なかでもNord-du-Québec地域は、鉱業による地域GDP貢献率が18.2%に達し、カナダでも有数の鉱業ハブとなっている。
Q2メタルズ(Q2 Metals、TSX-V:QTWO)のクリス・アッカーマン氏は「マタガミ積替拠点の近代化は、北部ケベックの鉱業開発と地域経済において非常に重要な一歩だ」と強調。自社のシスコ・リチウム・プロジェクトはマタガミから北へ150kmに位置し、今後の生産における輸送拠点として重要な役割を担うと述べた。
輸送コスト削減で銅・ニッケルなどベースメタルも追い風
ピボタル・メタルズ(Pivotal Metals、ASX:PVT)のマネージング・ディレクター、アイバン・フェアホール氏は、「銅・ニッケルなどの鉱山プロジェクトでは複雑な物流が収益性を圧迫するが、鉄道拠点への近接性があれば輸送コストを劇的に削減できる」と語った。
同社のホーデン・レイク(Horden Lake)プロジェクトは整備済み高速道路と接続されており、マタガミ経由で南方の精錬施設や輸出港にアクセス可能だ。鉄道整備が資本投資を呼び込むカギになるとして歓迎の意を示した。
アッカーマン氏も「輸送能力が整っていないと、鉱山の全体的な収支に悪影響を及ぼす」とし、「今回の改修は費用構造の最適化に貢献する」と評価した。将来的には、鉄道をさらに北へ延伸することが理想だとも付け加えた。
先住民クリー民族による「ラ・グランド・アライアンス」計画では、鉄道のマタガミ以北への延伸も提案されており、実現すればホーデン・レイク付近を通過することになる。これによりさらなる開発コストの削減が見込まれる。
ケベック州は、カナダにおける重要鉱物の生産・精錬拠点としての地位を確立する構えだ。ソシエテ・デュ・プラン・ノールの計画では、北部との接続強化、経済基盤の活用、地域コミュニティの活性化、環境保全の4本柱を掲げている。マタガミ拠点の改修工事は、2025年5月から10月までの予定で進行中だ。
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