新興国に拡大の機会:銅のグローバル供給網での価値向上へ

UNCTAD

UNCTAD、スマートな貿易政策と銅リサイクル強化を提言

国際連合貿易開発会議(UNCTAD)は、世界の銅需要が2040年までに40%増加すると予測する中、新興国が世界の銅貿易における存在感を高める機会を迎えていると指摘した。5月6日発表の報告書『Global Trade Update』で、UNCTADはこの重要鉱物をめぐる不均衡な供給体制を是正しなければ、クリーンエネルギーとデジタルインフラへの移行が停滞すると警鐘を鳴らした。

銅は戦略資産に格上げ、80鉱山と2,500億ドルの投資が必要

銅は今や単なるコモディティではなく、戦略資産としての重要性を帯びている。UNCTADの国際貿易・商品部門ディレクターであるLuz Maria de la Mora氏は、「銅市場は世界貿易の力の非対称性を映し出している」と述べ、現地での付加価値創出やリサイクルの拡大、貿易障壁の撤廃が必要であると強調した。

需要拡大に対応するには2030年までに80の新規銅鉱山と2,500億ドルの投資が必要とされる。しかし現在、銅鉱床の半数以上がロシア、オーストラリア、チリ、ペルー、コンゴ民主共和国に集中しており、実際の付加価値は主に中国など他地域で創出されている。

中国が加工を独占、新興国はバリューチェーンの下層に

2023年、中国は世界の銅鉱石の60%を輸入し、精製銅の45%以上を供給した。アジア全体では、精製銅生産量が1990年の1,080万トンから2023年には2,660万トンへと3倍に拡大。この状況により、多くの資源国が原料輸出にとどまり、産業化が進まない構造的課題を抱えている。

UNCTADは、新興国がインフラ投資・技能育成・地域的な価値連鎖の強化を進めることで、グローバルバリューチェーンにおける地位を引き上げ、エネルギー・技術転換の恩恵をより公平に享受できると述べている。

銅リサイクルは脱炭素と経済効率の鍵

2023年には、全精製銅の20%(4.5百万トン)がリサイクル由来であった。米国、ドイツ、日本が銅スクラップの主要輸出国である一方、中国、カナダ、韓国は輸入を主導している。UNCTADは、開発途上国が銅リサイクル能力を強化することで、輸入依存の低減・排出削減・循環型経済の推進が可能になると提言している。

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