ウクライナ鉱業協会、CBAMの適用延期をEUに要請 — 鉱金属輸出に最大14億ドルの損失も

CBAM

ウクライナ国家採掘産業協会(NAEIU)と主要な鉱業関連企業は、欧州連合(EU)が導入する越境炭素調整メカニズム(CBAM)の適用延期もしくは免除を求め、政府に対してEUとの緊急協議開始を訴えている。

NAEIUがウクライナ最高会議(国会)の環境政策・自然資源管理委員長オレフ・ボンダレンコ氏宛に送付した書簡によれば、ウクライナの輸出のうち約15~17%がCBAM対象品目(鉄鋼、セメント、肥料など)に該当する。とくに戦時下でEUが最大の輸出先となっている現状では、同制度がウクライナ経済に与える悪影響は極めて大きいと強調している。

鉱業・金属業界はウクライナ最大の輸出・納税セクターであり、CBAMの完全適用により、2030年までに輸出損失は14億ドル超、うち金属関連が13億ドルを占めると推計されている。また、GDP全体では72億ドルの損失が見込まれ、税収損失は最大9.1億ドルに達する恐れがある。

同協会は、CBAMの適用除外が可能なEU規則第2023/956号第30.7条(不可抗力条項)に基づき、EU側と外交交渉を開始するよう経済省、環境省、外務省など関係省庁に働きかけを行っている。

他の新興国(インド、中国、南アフリカなど)は自国産業保護の観点からCBAMへの対抗措置を講じているが、ウクライナ政府の「静観姿勢」は非現実的であると協会は指摘。欧州のグリーン・トランジションに資する鉄鋼原料供給国として、戦時下のウクライナ経済は特別な配慮を受けるべきであると訴えている。

コメントを投稿