米中の追加関税応酬、米国産原料炭市場に逆風

原料炭

アジアの供給過剰と需要停滞が圧力に

米中両政府による新たな報復関税の応酬が、製鉄用原料炭(メタラジカルコークス/メット炭)市場に影響を及ぼしている。特に米国産原料炭の中国向け輸出再開の動きに冷水を浴びせる格好となった。

米国は4月9日付で中国製品に対し追加34%の関税を課す措置を発動、合計関税率は54%に達した。これに対抗し、中国政府は4月10日付で米国製品への追加関税を実施、米国産原料炭に対する総関税率は52%となった。

これにより、アジア市場では「米国産原料炭の中国向け輸出は事実上停止に追い込まれた」との見方が広がっている。中国は世界最大の製鉄国であり、同国向け輸出の停止は米国炭の需給バランスに大きく影響を及ぼす可能性がある。

米国産の海上輸出量は2024年に5,034万トンと、2018年の5,146万トンに迫る水準まで回復していた。中でもアジア向けは2,264万トンと、2018年比で6割以上増加していた。

しかし、2025年1~3月期の輸出量は前年同期比48%減の658万トンに落ち込んでおり、足元の市況悪化と重なって厳しい状況となっている。

一方、中国側は「既に価格競争力を欠いており、関税上乗せによる影響は限定的」としており、中国国内市場の原料炭需給には大きな影響がないとの見方もある。

アジア市場では、中国と豪州炭の価格乖離が拡大するとの見通しも出ており、「中国不在の中、インドや東南アジア向け価格が押し下げられる」との声も聞かれる。

豪州炭のFOB価格は4月7日時点で1トンあたり177ドル。米国炭がインド市場で価格競争力を得るためには、190~220ドルの価格帯が必要とされており、現状では厳しい。

米国内では原料炭の消費は安定しているが、輸出比率が高いため全体を吸収するには限界があるとの指摘もある。

さらに米国は4月2日付で輸入自動車に25%の関税を発動。これにより欧州やアジアの鉄鋼・自動車関連企業にも影響が波及しており、世界の鉄鋼需給に不透明感が広がっている。

日本や韓国、東南アジア各国では今後、保護主義的措置が連鎖的に拡大する可能性もあり、原料炭需要をさらに圧迫する懸念が出ている。

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