リサイクル鉄価格が安定推移:米国需要と地政学リスクが市場を下支え

Recycled Steel


米国鉄鋼生産の回復とスクラップ需給の安定化

米国のリサイクル鉄市場は、2026年4月時点で堅調な国内需要と生産回復を背景に安定した価格推移を維持している。AISIの統計によると、米国の粗鋼生産は4月4日週に183万トンを超え、稼働率は79.1%まで上昇した。前年の75.6%と比較して明確な改善が見られ、年間ベースでも5%超の増産となっている。この高稼働率がスクラップ需要を支え、リサイクル鉄価格の下落圧力を吸収している。

一方で供給側では春季の天候改善により回収量が増加しており、本来であれば価格下押し要因となる環境が形成されている。しかしながら、米国では輸入鉄鋼に対する最大50%の関税政策が継続しており、国内ミルの競争力と市場シェアを押し上げている。その結果、供給増加と需要拡大が相殺され、リサイクル鉄価格は大きな方向感を欠いたまま横ばい圏で推移している。


自動車・建設需要が支える国内消費構造

米国のリサイクル鉄価格は、特に自動車産業の回復によって下支えされている。Cox Automotiveによると2026年3月の新車販売は大きく増加し、結果として4月初旬の在庫水準は前月比で約10%減少した。この動きは自動車組立および部品メーカーの稼働を促し、短期的に鋼材需要を押し上げる要因となっている。

しかしながら建設分野では明確な成長加速は見られず、投資は横ばいに近い状態が続いている。特に製造業向け建設はピークアウト傾向にあり、需要の伸びは限定的である。ただしデータセンター建設は例外的に拡大しており、2026年1月時点で前年比31%増の470億ドル規模に達している。この分野が構造用鋼需要の数少ない成長ドライバーとなっている。


地政学リスクと国際スクラップ市場の変動

リサイクル鉄価格は国際的な地政学リスクによっても影響を受けている。中東情勢の緊張によりホルムズ海峡周辺の輸送が不安定化し、GCC諸国から南アジア向けのスクラップフローに混乱が生じた。これによりインド、バングラデシュ、パキスタンなどの買い手は調達価格を引き上げている。

またトルコ市場でも電炉向けスクラップ需要が変動し、輸出価格の不安定要因となっている。その結果、地域ごとに需給のばらつきが拡大し、グローバルな価格形成はより複雑化している。特に米国発のスクラップ輸出は、こうした外部要因により価格下支えを受ける構造となっている。


金属フォーカス 編集部コメント

米国市場は高稼働率と関税政策により短期的な安定性を維持しているが、供給増加と輸出市場の分断が中期的な変動要因として残る。今後は電炉鋼の比率拡大に伴いスクラップ依存度がさらに高まり、地域間需給の非対称性が価格形成の鍵を握る可能性が高い。


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