中国、全固体電池開発を加速–ニッケルとリチウム需要の見通し

China solid state battery


中国の電気自動車(EV)およびバッテリー製造企業は、全固体電池の開発を加速しており、これによりニッケルやリチウムなどの金属の需要が長期的に拡大する可能性があります。しかし、大規模な商業化にはまだ不確定要素が残っています。


全固体電池の進展と中国のバッテリーメーカー

2023年10月24日、中国のバッテリー正極材料製造企業である北京易春材料科技(Easpring)は、全固体電池に使用される正極材料の納入を開始したと発表しました。Easpringは、超高ニッケル複合材料や超高容量リチウムリッチマンガン系材料を20トン以上のオーダーで提供しています。これらの材料は、液体バッテリーと比較して、エネルギー密度が大幅に向上しています。

Easpringの超高ニッケル複合材料は、すでに液体バッテリーと同等の性能に近づいており、エネルギー密度は400Wh/kgを超え、現在の液体バッテリーの水準を大きく上回っています。この進展は、全固体電池が次世代のパワーバッテリーとして期待される背景となっています。


全固体電池の市場における将来性

全固体電池は、リチウム金属をアノード材料として使用することが予定されています。これにより、従来のグラファイトアノード材料に比べて、バッテリーのエネルギー密度が飛躍的に向上します。中国の自動車メーカー「チェリー」は、600Wh/kgのエネルギー密度を誇る全固体電池モジュール「Rhino S」を発表し、1,200km以上の走行距離をサポートする予定です。このバッテリーは、2027年から車両組立と検証が開始される予定です。

また、Sunwoda(サンウォダ)は、400Wh/kgのエネルギー密度を持つ次世代ポリマー全固体電池「Xin·Bixiao」を発表し、さらに520Wh/kgのエネルギー密度を持つリチウムメタルスーパー電池の実験サンプルも試験中です。これにより、リチウムやニッケルといった素材の需要が一層高まることが予想されます。


ニッケルとリチウム供給への影響

全固体電池の開発は、ニッケル供給業者にとって新たなチャンスをもたらすと期待されています。ニッケルは、全固体電池のエネルギー密度、ライフサイクル、安全性の向上に役立つ超高ニッケル前駆体として使用されます。また、リチウムの需要も増加する見込みであり、これらの金属の供給は今後ますます重要になるでしょう。

全固体電池の商業化には、技術的なボトルネックの解消や製造コストの削減が課題として残っていますが、多くの主要自動車メーカーは、2030年ごろにこの技術を搭載したEVの量産が始まると予測しています。しかし、これらの車両が市場に普及するには数年を要し、消費者が高額な全固体電池を購入できるかどうかは不確かです。


結論と今後の展望

全固体電池の開発は、リチウムやニッケルの需要を大きく変化させる可能性がありますが、その普及にはまだ時間がかかると見られています。特に、商業化に向けて解決すべき技術的な課題が多く、安価で広範な普及を目指すには、さらなる研究開発とコスト削減が不可欠です。しかし、全固体電池技術が成熟すれば、長期的にはリチウムやニッケルの市場に大きな影響を与えることが予想されます。


金属フォーカス 編集部コメント

全固体電池の進展は、ニッケルやリチウム供給業者にとって新たなビジネスチャンスを提供します。特に、次世代のパワーバッテリーとしてのポテンシャルは非常に大きく、エネルギー転換や高技術産業における重要な役割を果たす可能性があります。今後の技術革新と商業化がどのように進展するかが、業界全体の成長に大きな影響を与えるでしょう。


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