バンコクで開催されたBIR会議:リサイクル業界のグローバル拠点としての役割

BIR Conference 2025 in Bangkok


2025年10月、タイ・バンコクで開催されたBIR(国際リサイクル局)会議は、金属リサイクルの最前線を共有する重要な場となりました。鉄鋼から非鉄金属、さらにはチタンニッケルといった特殊金属のリサイクルに至るまで、循環型経済のあらゆる側面が議論され、業界の未来に対する新たな視点が提示されました。特にアジア太平洋地域におけるリサイクル市場の拡大が、今後の世界的なリサイクル活動において大きな影響を与えることが予想されています。


鉄鋼スクラップがグローバルな供給網で果たす重要性

BIR会議では、鉄鋼スクラップの重要性が強調されました。現在、世界の鉄鋼生産の30%以上がリサイクルスクラップから供給されており、電気炉(EAF)による鉄鋼生産の拡大がその戦略的価値をさらに高めています。アジアは依然として世界最大の鉄鋼スクラップ輸入市場であり、特に韓国、日本、台湾が主要な買い手となっており、インドの急成長する需要も重要な議論の対象となりました。

鉄鋼リサイクルの重要性が増す中、企業は供給網の効率化とリサイクル技術の革新を追求しており、スクラップ市場の需要はますます高まっています。このトレンドは、特にアジア市場における鉄鋼リサイクル技術の発展に寄与しています。


非鉄金属リサイクルの加速とステンレス鋼の循環経済

会議では非鉄金属リサイクル、特にステンレス鋼のリサイクルが注目されました。ステンレススクラップは、そのクロムやニッケルの含有量が高いため、非常に高い価値を誇ります。世界のステンレス鋼生産の70%以上がリサイクル材を使用しており、特に300シリーズのステンレススクラップは、ニッケル含有量が高いためプレミアム価格が付けられています。

さらに、EVバッテリーや電子廃棄物から回収される銅、アルミニウム、亜鉛などの非鉄金属は、経済的価値が急増しており、これらの金属を再利用することで新たなビジネスチャンスが生まれています。非鉄金属リサイクルの加速は、今後の循環経済における重要な要素として注目されています。


特殊金属のリサイクル市場の拡大

バンコクでのBIR会議では、チタンやニッケルなどの特殊金属リサイクルも重要な議題となりました。特に航空宇宙や化学工業、医療機器などの分野で使用されるチタン合金スクラップは、一次生産のコストが高いため非常に魅力的なリサイクル資源とされています。適切な分別と処理を行うことで、チタンは航空機部品や化学反応器、インプラントに再利用され、トンあたり数千ドルの価値を持つことができます。

また、ニッケルベースのスーパーアロイ(高性能合金)スクラップも高価値な資源となっています。航空宇宙産業の成長に伴い、ガスタービンやジェットエンジンの部品から回収されるニッケルを豊富に含むスクラップは、精錬後、新たなスーパーアロイの製造に再利用されます。これらの特殊金属のリサイクルは、戦略的に重要な資源として、ますます価値を増しています。


BIR Conference 2025 in Bangkok


アジアが特殊金属リサイクルの新たな拠点に

BIRは、リサイクル業界における情報交換とネットワーキングの場を提供すると共に、政策立案者や関連業界に対して技術的な支援も行っています。アジア太平洋地域におけるリサイクル市場の急成長に伴い、BIRの役割はますます重要になっています。特に、特殊金属リサイクル市場は急速に拡大しており、アジアは今後のリサイクル技術革新や持続可能な資源循環システムの中心となることが期待されています。

BIR会議は、アジアにおけるリサイクルインフラの拡大や技術革新を議論する重要なプラットフォームとして、業界の発展に寄与しています。これにより、リサイクル市場の拡大が加速し、循環経済の実現に向けた道が開かれつつあります。


金属フォーカス 編集部コメント

アジア市場の急成長に伴い、特殊金属のリサイクルは今後ますます重要な役割を果たします。特にチタンやニッケルといった高価値金属のリサイクル技術は、企業にとって競争優位性を生むカギとなるでしょう。リサイクルインフラの整備と技術革新が、循環経済を加速させる要因として注目されています。


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