アメリカの重要鉱物供給拡大へ: スティブナイト金鉱・アンチモン鉱プロジェクトが始動

Stibnite gold antimony project


アメリカ重要鉱物供給強化を目指すペルペチュア・リソーシズ(Perpetua Resources)が、アイダホ州のスティブナイト金鉱・アンチモン鉱プロジェクトの建設を開始しました。このプロジェクトは、トランプ政権時に迅速化された重要鉱物供給チェーン強化策の一環として位置付けられており、金属業界にとって大きな転換点となります。今回の記事では、スティブナイトプロジェクトの詳細、環境への配慮、アメリカ国内におけるアンチモン需要の拡大などについて詳しく解説します。


スティブナイトプロジェクトの背景と規模

ペルペチュア・リソーシズは、1.3億ドル(約1.7兆円)を投じて、アイダホ州中央部に位置するスティブナイト鉱山の建設を本格的に開始しました。この鉱山は、アメリカ国内におけるアンチモンと金の供給を大きく変える可能性を秘めており、年間450,000オンスの金を生産する見込みです。さらに、スティブナイト鉱山は、148百万ポンドのアンチモンと6百万オンス以上の金を確保しており、アメリカにおける重要鉱物の供給源としての役割を果たすと期待されています。

スティブナイト鉱山は、アメリカ国内で数少ないアンチモンの供給源として注目されています。この鉱物は、防衛システム、エネルギー貯蔵、半導体など、先進的な技術分野で不可欠な素材です。また、スティブナイト鉱山は、中国によるアンチモン輸出制限に対抗する形で、アメリカが自国の供給源を確保するための重要な戦略的プロジェクトとされています。


環境への配慮と地域社会との調整

ペルペチュア・リソーシズは、鉱山開発において環境への影響を最小限に抑えることを最優先しています。最終的な鉱山計画では、プロジェクトのフットプリント(占有面積)を13%縮小し、川や湿地の条件を改善し、魚類の生息地を再接続するなど、地域の生態系への影響を低減するための取り組みが行われています。

しかし、ネズ・パース族(Nez Perce Tribe)をはじめとする地域住民の一部は、プロジェクトに対する懸念を示しています。特に、サケなどの水生生物の生態系への影響を懸念しており、環境へのリスクが議論の中心となっています。このような対立を解決するために、ペルペチュア・リソーシズは地域住民との協力を進める必要があります。


今後の展開とアメリカの重要鉱物供給

スティブナイトプロジェクトは、アメリカ国内のアンチモン需要の約35%を供給する可能性があり、特に初期の6年間で大きな役割を果たすと予想されています。このプロジェクトが成功すれば、アメリカの金属業界はさらに強化され、国の戦略的な資源供給チェーンの独立性が高まることになります。

また、ペルペチュア・リソーシズは、アメリカ輸出入銀行(EXIM)などから最大20億ドルの融資を得る計画も進行中であり、これによりプロジェクトの資金調達と進行が円滑に進む見込みです。最終的な融資決定は2026年春を予定しています。


金属フォーカス 編集部コメント

スティブナイトプロジェクトは、アメリカの重要鉱物供給強化における重要なステップとなり、国内の鉱物供給の自給率向上に寄与するでしょう。しかし、地域社会や環境への影響については引き続き議論が必要であり、持続可能な開発への取り組みが求められます。

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