テック・リソーシズの銅生産削減が示す世界的な供給圧力の高まり

Teck Resources Copper


カナダの大手鉱山会社、テック・リソーシズ(Teck Resources)は、チリの主要鉱山での生産課題により、2028年までの銅生産目標を繰り返し引き下げています。世界の主要生産国であるフリーポート・マクモラン、コデルコ、アイヴァンホー・マインズなども鉱山の地質的な問題に直面し、銅の供給見通しが悪化している状況です。


テック・リソーシズの銅生産目標引き下げと現状

テックは今年の銅生産量を41万5,000~46万5,000トンに見直しました。これは当初計画の47万~52万5,000トンから大幅な減少です。2024年の44万6,000トンからも増産を目指していましたが、実現が困難となっています。さらに2026年の目標も55万~62万トンから45万5,000~53万トンへ、2028年に至っては47万5,000~54万5,000トンから43万5,000~51万トンに引き下げられました。

また、亜鉛鉱石の生産も今年の52万5,000~57万5,000トンから2028年には27万5,000~32万5,000トンへと大幅に減少する見込みです。


ケブラダ・ブランカ鉱山の開発遅延が生産低迷の主因

テックの銅生産成長の鍵を握るチリ北部の大型鉱山、ケブラダ・ブランカ(QB)鉱山は、尾鉱処理施設の開発遅延により生産能力が制約されています。尾鉱処理施設の拡張ペースが遅いため、加工プラントの処理能力が制限されている状況です。

同鉱山の今年の銅生産見込みは17万~19万トンに引き下げられ、当初の21万~23万トンから減少しました。来年も20万~23万5,000トンに目標を縮小しています。これらの課題は2028年まで続く見通しです。


世界的な銅供給不足の懸念と業界の動向

アナリストの指摘によれば、2026年の生産目標削減は市場に大きなインパクトを与える見込みです。QB鉱山は隣接するアングロ・アメリカンとグレンコアが所有するコラワシ鉱山と資産統合を進めており、コスト削減や生産増加を目指しています。これにより世界第5位の銅供給者となる可能性があります。

しかしながら、アングロ・アメリカンやグレンコアを含む主要鉱山も鉱石品位の低下や水資源不足により生産拡大が困難です。世界第2位の銅鉱山であるフリーポートのグラスバーグ鉱山の操業停止は、約27万トンの供給不足を招く恐れがあります。

銅鉱石の供給不足は市場価格にも反映されており、2025年10月初旬のTC指数は史上最低水準に近づいています。BofA Securitiesのジェイソン・フェアクロウ氏は、過去15年間の予測を大きく下回る生産となる可能性を指摘し、「予期せぬ供給途絶が問題をさらに悪化させている」と警鐘を鳴らしています。


金属フォーカス 編集部コメント

テック・リソーシズの銅生産目標引き下げは、鉱山開発の物理的制約と資源開発のリスクを改めて浮き彫りにしました。銅市場の供給逼迫は長期化する見込みで、世界のエネルギー転換や電気自動車需要増加を背景に価格変動リスクが高まります。業界は資源開発の効率化と持続可能な水資源管理に注力する必要があります。

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