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Gold Prices |
Sprott Asset Management社は、金価格が大幅な上昇局面に入る可能性を指摘しています。同社の市場ストラテジスト、ポール・ウォン氏は、マクロ経済と政治の複合的なダイナミクスがこの動きを牽引すると分析します。特に、インフレ圧力、米国金利の不確実性、そして政治的不安定性が、安全資産としての金への需要を押し上げると強調します。これらの要因は、金市場に強気なシグナルを送り続けています。
関税によるインフレ圧力と金利動向の行方
米国で新たな関税が発動し、その影響が消費者に届き始めています。ウォン氏は、関税がモノのコストを押し上げ、インフレ圧力を高めると見ています。インフレは購買力の低下を招くため、歴史的に金は資産の価値を保つヘッジ手段として機能してきました。そのため、このインフレ懸念が金への需要を刺激する主要な要因の一つとなっています。
加えて、米国の金融政策も不確実性を増しています。米国連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを検討する一方で、政治的な圧力も受けています。ウォン氏は、利下げとインフレ圧力が結びつくことで、実質金利が低下すると指摘します。この実質金利の低下は、非利回り資産である金にとって歴史的に有利な環境を作り出します。
ドルの信用失墜と中央銀行の行動
ウォン氏は、FRBの独立性が失われる可能性が、ドルの価値を希薄化させる「デベースメント・トレード(価値希薄化取引)」につながると警鐘を鳴らします。ドル安はインフレを加速させ、米国の負債を実質的に目減りさせます。この状況は、世界の基軸通貨としてのドルの持続可能性を脅かします。
その結果、価値の保存機能は、金のような中立的な準備資産へと移行する可能性が高まると分析します。すでに世界の中央銀行は、猛烈な勢いで金の現物を購入しています。この動きは、米ドルに集中していた外貨準備の分散化を示唆しており、世界の金融システムにおける金の役割が変化していることを裏付けています。
金属フォーカス 編集部コメント
今回のSprott社の分析は、現在の金価格上昇が単なる短期的な投機ではなく、構造的な変化に支えられていることを示唆しています。世界の経済・政治環境が不確実性を増す中、金はヘッジ資産としての魅力をさらに高めています。特に、FRBの独立性への懸念や、世界の中央銀行による活発な金購入動向は、長期的なトレンドの転換点となる可能性を秘めています。グローバルな投資家や政策担当者は、これらの要因がもたらす影響を慎重に注視すべきです。